「地球は水の惑星」という言葉に騙されてはいけない

「世界はこれから水不足の問題に直面する」と言われる所以を、簡単に説明しておきましょう。

私たちの暮らす地球は「水の惑星」と呼ばれるほど、たくさんの水が存在しています。地球の表面の3分の2は水で覆われており、地球上に存在している水の量をすべて合計すると約14億立方キロメートルにもなるのです。

しかし、その大部分は海水のため、そのままの状態では資源として利用することができません。私たちが生活や農業、工業に利用することができる淡水は実に全体の2.5%、約3500万立方キロメートルしかないと言われています。

これだけでも驚きだとは思いますが、残念ながら現実はもっと厳しいです。地球上に存在する水のうち2.5%しかない淡水ですが、1.7%は氷河や南極の氷として存在しており、これもまた人類が資源としてすぐに活用することは難しいです。

地下水や河川、湖沼などの形で存在する淡水の量は地球全体の水のうち約0.8%に過ぎず、さらにこの大部分が地下水として存在しています。そのため、人類が取水しやすい状態の淡水は地球の水全体のわずか0.01%。量に換算すると約10万立方キロメートルしかありません。

つまり、私たち人類は非常に限られた水資源を分け合って生活しているということです。このことを大前提として頭に入れておくことが、世界の水不足を理解する上では欠かせません。

2030年、世界人口の47%が水不足になる

「水なんて循環するものだから問題ないだろう」と感じる人もいるかもしれません。しかし、水資源の分布には偏りが生じます。一部の地域ではよく雨が降るけれど、他の地域では干ばつが問題になるといったことです。

国連開発計画も「世界全体を見るとすべての人に行き渡らせるのに十分なだけの水量が存在しているが、国によって水の流入量や水資源の分配に大きな差がある」と指摘しています(『人間開発報告書2006』より)。国や地域によって、アクセスできる水資源の量には大きな格差があるのです。

現在78億人を超えた世界人口ですが、2030年には85億人を突破すると予測されています。そのため、UNESCO(国連教育科学文化機関)は「2030年には世界人口の47%が水不足になる」と懸念を発表しています。世界人口のうち、実に2人に1人が水不足に陥るという見立てです。

ある地域では清潔な水にアクセスできる一方、別の地域では清潔な水にアクセスできない。

地域間で得られる水資源の量に格差が生じれば、その格差が水を巡った争いに繫がるかもしれません。20世紀は石油を巡って戦争が起こりましたが、21世紀は水資源を巡った戦争が起きるとすら言われているのです。