水戦争を起こさないために見直すべき食生活

現代の人類は、ただでさえ少ない水資源を分け合って生きています。先述した通り、肉を生産するためには大量の水を消費する必要があることを考えると、肉食が水不足の問題にも繫がることを理解できるはずです。水資源を巡った争いが起きるとすら危惧されている今、たとえ間接的だとしても、畜産業がその一因となる可能性は否定できません。

世界人口は2030年には85億人、2050年には97億人に増えると予測されています。特にアジアやアフリカの国々では経済成長に伴い中流階級の人口が大きく増加することが予測されており、そのような国々では肉食に対するニーズも高まっていきます。しかし、現時点においても畜産業に多くの水資源が使われており、世界ではすでに水不足が深刻化しているところもあります。

水は人間が生きていくためには絶対に欠かせないものです。今後増えていく世界人口を養うための十分な水を確保するには、やはり肉食中心の食生活や現代の食システムを見直さなければなりません。

社会問題を解決するための菜食ムーブメント

近年は食のあり方を変えることによって様々な問題を解決しようとする考え方も広がっており、ヴィーガンやベジタリアンなどの菜食主義ムーブメントは、まさにその一つです。

原貫太『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』(KADOKAWA)
原貫太『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』(KADOKAWA)

私の周りにも菜食主義に転向したり、肉を食べる量を意識的に減らしたりする人も増えてきました。「身近な生活を通じて環境問題や社会問題の解決に貢献したいから」という理由でそうする方も多いようです。

食は私たちの生活の根幹を成しています。一朝一夕で変えることは難しいでしょう。特にヴィーガンの話題は、ネット上だと炎上やバッシングのターゲットになりやすい傾向があり、人によっては自らの生活を否定されているように感じてしまう人もいるかもしれません。しかし、そのようなムーブメントが世界全体で起きている背景には、必ず理由があるのです。

もちろん社会問題の解決ばかりを考えて生活にストレスを感じたり、自らの欲求に蓋をし続けていたりすれば、それもまた持続可能な取り組みということはできません。しかし、現代の食システムが世界で起きている様々な問題と関係していることは、残念ながら疑いようのない事実です。持続可能な社会を築いていくのであれば、好むにせよ好まないにせよ、私たちは自らの食生活を見直さなければならない時に差し掛かっています。

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