妻に対して部下と同じ要領で対応してしまう

「だから、ネットで調べた情報を頼りに、『こうすれば貯金できるはずだ』とか、『なんでおまえは貯めることができないんだ?』とか言われて、妻はカチンとくるのです」

いままで見向きもしなかった家庭のことにうるさく口を出して、命令や指示を出すのだが、自分からは何も動かないでモラハラ予備軍になる夫たちも少なくない。

「無意識なんですが、仕事場での部下対応と同じ要領で妻に対応してしまうようです」

「釣りバカ日誌」のハマちゃんでない限り、多くのサラリーマンは管理職の身分で定年を迎える(その前に役職定年になる場合もあるが)。長年、人を“使う”立場にいた人間は、その感覚が身についてしまっている。

宮本さんによれば、定年をすぎた夫に関して一番多い不満は、「一方的に威張り散らされること」だという。団塊世代以上になると、男尊女卑感覚が残っている人も少なくないので、さらに高い場所からの目線でものを言うことになる。

定年後、夫は夫婦で旅行に行きたがることが多いが…

私は、過去にこんな相談を受けたことがある。六五歳の夫は定年退職してからというもの、一日中パソコン、テレビにしか興味を示さず、一歩も家から出ない生活をしている。口うるさく妻の行動に干渉し、暴言を吐くようになった。そんな夫に対し、いままでの結婚生活で耐えてきた不満が吹き出し、文句を言うと、「出て行け」と逆ギレされたという。夫は、「ありがとう」さえ言ったことがない。謝ることも絶対しない人だそうだ。いままでの夫の仕打ちを言葉にするだけで声が震えてしまうほどつらい気持ちにさせられるそうで、心療内科にも通院しているという話だった。

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定年になると、夫は夫婦で旅行に行きたがるが、意外と妻は乗り気でないことが多い。私のまわりにも、「友人との旅行のほうが楽しい。夫との旅行はつまらない」と言う妻は驚くほど多い。一方的に、夫のペースで進んでいく旅になってしまうのが原因だそうだ。

「私も産後うつになったから、よくわかるのですけれども」と、宮本さんは語る。

「産後うつはホルモンの急減と心身の疲弊でかかる心の落ち込みです。不慣れな子育てと家事がつらい時期に働き盛りの夫は見て見ぬふり。助けを求めても、『育児は女の仕事』と非協力的。ドン底にいた妻は、そんな夫の言動を何十年経っても恨みに思って忘れません。吐き出せないままおりのように積み重なって、地雷を埋めたようなものですね」