例外もあります。たとえば、「YouTube」に新作映画など違法映像がアップされていたとします。それを自分のパソコンにダウンロードすると法に触れますが、キャッシュを残してストリーミングするだけならば許されます。見る、聴くだけならいいけど、落としたらダメ。これが一応の線引きです。

この法改正にはいくつか問題があります。条文を見ると、私的使用に関する新たな例外として「著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」が著作権侵害にあたると付け加えられました。自動公衆送信とは、サーバーなどに登録されている情報を一般公衆からのリクエストに応じて送信することを指しますが、範囲が「録音又は録画」に限定されています。つまり、音楽と映像は対象となっているのに、ビジネスソフトウエアは規制外。さっそく関係者の一部からは不満の声が上がっています。

図を拡大
著作権法改正、何がOK、何がダメ!?

2つ目は、海賊版のコピーだという「事実を知りながら行う場合」のみがNGで、知らないで行えばとがめられないこと。これは、受け手側が悪意の場合に限定しているわけですが、受け手側が海賊版なのかを見分けることが常に容易だとは限りません。法の管轄省庁である文化庁側は、国会答弁でそのサイトが正規か非正規かの明確化を図るために「識別マーク」の普及を推進して広報活動も積極的に行うといっていますが、ユーザーにどれだけ浸透するか疑問です。

また、今回の改正では刑事罰はありません。フランスには「スリーストライク法」といって違法ダウンロード常習者のパソコンを裁判所の判断でネットに接続できなくするという厳しい法律があります。ただ、日本人は罰則規定がなくてもルールが定められれば無茶はしない国民なので、ある程度の効力は期待できるでしょう。

著作権法はもともと複雑な構造を持っていますが、今回の改正も「例外に例外をさらに加える」ものでたいへんややこしい。近い将来には抜本的な法整備が求められるかもしれません。

※すべて雑誌掲載当時

(小檜山 想=構成)