初動において注目したい「政府と分科会の距離感」

本来、そのような政治混乱を招かないために新型コロナウイルス感染症対策分科会(以下分科会)の助言があったはずだが、分科会は「人流が減ってないので感染者数も減るはずがない」というロジックから一歩も出ず、提示される解決案は常に行動規制しかない。

少なくとも人流抑制が感染終息ひいては経済復活の鍵だというのであれば、半年前から日常を取り戻し、潜在成長率の2~3倍のスピードで走っている欧米経済の現状は一体なぜなのかもセットで情報発信することが必要だろう。明示的には認めないが、結局、感染者数の増減要因はよく分かっていないのではないか。

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もちろん、現時点で分からないことは悪ではない。しかし、「分からないものは分からない」と認めた上で、無為に人流に帰責した経済犠牲を強いるような基本姿勢を改めなければ、分科会の提示する戦略と一緒に日本経済が沈んでしまう。戦略の失敗は戦術では取り返せない。

いくら「世界最速のワクチン接種率」という現状考え得る最高の戦術があっても、「人流が元凶なので行動規制強化」という戦略思想に固執し、出口に向けたロードマップも検討しないのでは成長率や物価の復元は絶望的である。英国は2月、米国は3月の時点でロードマップを描いていた。ここまでワクチン接種率が高まっているわけだが、日本だけできない(やりたくない)理由があるのだろうか。

かかる経緯を踏まえ、岸田政権の初動においてはコロナ対策に関して「政府と分科会の距離感」をいかに修正してくるのかに注目したい。その修正いかんによっては従前のコロナ対策が良い方向に旋回していると評価され、株式市場を筆頭に金融市場から好意的な評価を得られる可能性がある。もちろん、分科会が従前の方法論に固執せずに医療資源の拡張に舵を切り、行動制限を脇に置いた上で出口戦略まで描けるようになれば、それはそれで望ましい話ではある。

コロナ対策の旋回と成長率復元は急務

では、岸田政権のコロナ対策は実際どうなりそうなのか。筆者は期待したいと思っている。岸田総理はコロナ対策に関し「岸田4本柱」を打ち出している。

これは①医療難民ゼロ、②ステイホーム可能な経済対策、③電子ワクチン接種証明(ワクチンパスポート)活用および検査の無料化拡充、④感染症有事対応の抜本的強化である。これに付随して健康危機管理庁の設置も主張され、野戦病院のような臨時医療施設の開設の話も出ている。結局、行動規制の必要性は医療逼迫ひっぱくを招く病床不足に起因している。