堀秀作さん(34歳)と妻の香世子さん(32歳)は、震災後の5月に入籍した。出会いは2年前。交際直後から互いに結婚を意識したが、時期までは決めていなかった。4年前に転職した秀作さんにとって、結婚よりは「まず仕事」。香世子さんも、さほど焦りはなかったという。だが、震災が2人を変えた。それぞれが職場で大きな揺れに遭遇、連絡をとろうとしたが、電話もメールもつながらない。業を煮やした香世子さんが、会社帰りに秀作さんの職場へ。4時間歩いてようやく彼に出会えた瞬間、「今離れたら、いつ会えるかわからない」「ずっと一緒にいたい」と強く感じたという。
5月に入籍し、夫婦生活をスタート。香世子さんの隣には、いつも彼がいた。
「ひとりじゃないって実感できたし、地震にも私のわがままにも動じない彼を、『頼もしい』と感じるようになった。そりゃ欲を言えば、いろいろありますけど」
結婚前は、彼を理想に近づけようとした。年収にもこだわりがあった。でも震災後は、彼のいいところに目が向くようになった、と香世子さん。年収が十分でないなら、自分が働いて補えばいい、求めるだけで幸せになるのは難しいと悟ったという。
「今一番大事なのは、やっぱり家族。私はもともと大家族だから、子どもをたくさん産みたいし、彼の両親や祖父母ともどんどん関わって、皆で支え合いたい。長男の嫁で、むしろラッキーです」
最大のライフラインは「家族」。震災を経て、そう痛感した人も多かったろう。先の「ゼクシィ」伊藤編集長は言う。
「年収や地位(年功序列)などのスペックが持続的ではなくなった今、妻は夫の出世以上に、心のつながりを求める。独身女性も、『持続的な家族をつくっていこう』との覚悟と心意気を持った、行動力ある男性を求めているのです」
※すべて雑誌掲載当時