大事なプレゼンで頭が真っ白に

「当時の私は本当にITオンチでしたね。今、複数のデバイスを使いこなしているのが信じられないぐらい(笑)。この10年、そうした新しいものを常に学び続けてきた気がします。この世界は進化も変化も激しいですし、Googleもここ10年で急成長して大きく変わりました。ただ、自分たちに何ができるかを追求してユーザーの生活を豊かにしていこうという姿勢は変わらない。そこへの共感と、新しい発見の連続が楽しさにつながっています」

最初に配属された部署では、前職の経験を生かして広告営業として活躍。外資系の顧客が多かったため海外出張も頻繁で、ややおっちょこちょいな性格も手伝って「いつも綱渡りだった」と振り返る。

時差を忘れて空港から慌てて打ち合わせ場所に直行したり、ミーティングの日にちを間違えたりといったことは日常茶飯事。大事なプレゼンで、大勢の人を前にして緊張し、話すべき内容を全部忘れてしまったこともあった。

それこそ星の数以上に失敗したそうだが、挑戦した結果うまくいかなかったことはあっても、やってみればよかったと後悔したことは一度もないという。もともと前向きな性格でチャレンジ好き。会社も「失敗から学べばいい」という姿勢で、挑戦や成長を後押ししてくれた。

失敗が怖くて逃げ続けた3年間

だが、そんな阿部さんにも一度だけ、失敗が怖くて逃げ続けていた時期がある。40歳前後の約3年間、マネジャー職にという打診を「まだ営業現場でバリバリやりたいから」と断り続けたのだ。

「広告営業が天職だと思っていたので、現場にいたかったのは事実。でも、本音を言えば単純に怖かったんです。マネジャーになって、もしうまくいかなかったらどうしようと。せっかく営業で成績を上げているのに、その周囲の評価を失いたくなかった。今思えば、結局は失敗から逃げていたんですね」

そうした本音を知ってか知らずか、上司は決断を急がせることなく「準備だけはしよう」と言い、その後も折に触れて昇進を打診してくれた。そして3年後。上司の一言がついに阿部さんの心を動かした。