まったく当てにならない検察の統計

身柄拘束されている被疑者のうち、起訴されるのは半分ぐらいです。

勾留されている約9万人のうち、そのまま訴追されるのは約5万人(※1)に過ぎません。約4万人は訴追されずに勾留期間満期に釈放されます。

検察の統計によると、釈放され不起訴になった人のうち、4分の3は「起訴猶予」、すなわち前出の訴追裁量権に基づいて、犯罪は認められるが犯情や本人の反省の態度などを汲んで起訴しないという処分をしたものであり、4分の1が「嫌疑不十分」すなわち起訴しても有罪判決を得られる確信がないものということになっています。

しかし、この統計は全く当てになりません。統計上「起訴猶予」にカウントされている事件には本来「嫌疑不十分」にカウントされるべき事件──起訴されたら無罪になる可能性がかなりある事件──も少なからず含まれていると思います(※2)

私の経験上も、無罪を主張して黙秘や署名拒否を貫いた結果、不起訴処分を得たケースでも、検察庁の不起訴処分告知書の「不起訴処分の理由」欄に「起訴猶予」と書いてある例はたくさんあります。

客観的なデータはありませんが、私の感覚では、「起訴猶予」のうち30%ぐらいは、検察官が有罪判決を得られる確信がないために起訴しなかった、つまり本当は嫌疑不十分による不起訴なのではないかと思います。

(※1)2019年の検察統計によると公判請求が4万1607人、略式命令請求が7065人、家裁送致が3495人。検察統計年報2019年表44「既済事由別 既済となった事件の被疑者の勾留後の措置、勾留期間別及び勾留期間延長の許可、却下別人員 ─自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除く─」。
(※2)検察庁内部ではこのような起訴猶予処分を「嫌不けんぷ的起訴猶予」と呼んでいるそうです。デイビッド・T・ジョンソン(大久保光也訳)『アメリカ人のみた日本の検察制度:日米の比較考察』(シュプリンガー・フェアラーク東京 2004)、72~73ページ。

「保釈」は被告人の権利だとされているが…

すでに述べたように、英米では逮捕されてから24時間から48時間以内に保釈が認められて釈放されるのが原則です。

その後、捜査機関の取り調べを受けるということもありません。在宅でそれまでの生活を続けながら、来るべき公判の準備をするのです。

これに対して、日本で逮捕された被疑者は、23日間身柄拘束され、その間捜査官の尋問を繰り返し受けることになります。そして、起訴されれば、そのまま身柄拘束が続きます。

ここで初めて「保釈」という制度の対象になります。保釈は勾留状態で起訴された被告人が、裁判官が定める保証金(保釈金)を納めるのと引き換えに釈放されるという仕組みです。

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裁判官は保証金の額の他に、被告人の住居を制限するなどの条件(保釈条件)を定めることができます(刑事訴訟法93条)。保釈を認められた被告人が逃亡して公判に出頭しなかったり、保釈条件に違反したりすると保釈は取消されて身柄は再び拘束され、かつ、保釈金は没収されます(刑事訴訟法96条1項、2項)。

法律の建前では保釈は権利とされています。つまり、保釈の請求を受けた裁判官は原則「これを許さなければならない」というのが、法律の建前なのです(刑事訴訟法89条)。

それは、刑事訴追を受けた被告人は裁判所によって有罪を宣告されるまでは無罪の者として取り扱われなければならないという「無罪推定の権利」を保障されるというのが、今日の国際的な水準だからです(※3)

(※3)最高裁判所事務総局編『司法統計年報(刑事編)平成30年版』第32表。