医師が医学界の批判ができない本当の理由

そして日本の医学界のダメなところの第2に、上に逆らえない風潮がある。数字よりも“学会のボス”が言うことがまかり通る。もし、「統計上、コレステロール値が高い人のほうが長生きしているというデータがあります」などと言えば干されてしまう。どんなに統計調査や疫学調査をもって意見したところで、医学界では偉い先生が言っていることが正しいのだ。

コロナでも、誰も偉い教授の意見に統計数字で反論しないから、インフルエンザ並みの致死率しかないにもかかわらず、恐怖心が大きくなる一方だ。

余談だが、医師が医学界の批判ができないのは、82の大学医学部すべての入試に面接試験があるからだと思っている。子どもを落とされたくない医師が教授に忖度するからだ。医師としての適性を面接でみるのであれば、入試でなく国家試験でやるべきだ。そうすれば、医学部6年間の教育も変わるに違いない。

撮影=プレジデントオンライン編集部

「アメリカの言うことは正しい」と受け止めすぎ

話を戻そう。日本の医学界のダメな点の第3は、「アメリカ追随モデル」であることだ。日本人とアメリカ人は食生活も体質も違うのに、アメリカの医学界で正しいとされたことが日本でも正しいことになる傾向にある。

アメリカの医学界が「健康のために肉を食べる量を減らせ」と言ったら、日本の医学界も「肉を減らそう」と言い出したことがあった。アメリカ人は1日平均300グラム、日本人は平均80グラムと、食べている量がそもそも全然違うにもかかわらず、アメリカのデータは正しいと信じた。ところが実はその当時、1日平均100グラムの肉を食べていた沖縄の人や120グラムのハワイ在住日系人のほうが長生きだったのだ。

今回のコロナもアメリカで怖い病気だから、日本も追随して怖い病気にしてしまったように感じる。

ダメな点の第4は、心に関心がないこと。コロナの感染拡大防止対策の内容をみると、医療関係者を大事にしろと言いながら、心が無視されている。夜遅くまで現場で働いた医療関係者が、いざ晩ご飯を食べる時間にはもう店が開いていない。会食は禁止、仕事が終わった後の愚痴も禁止。

感染症の医師たちはふだん動物実験の研究が多いから、治療の現場に思いが至らず、心ない対策しか立てられないのだ。