バレエダンサー、プロボクサー、eスポーツ世界大会優勝の医師も実在
●広田有紀(秋田大医学部出身):中距離ランナー
新潟県出身で母親が眼科医。中学1年から本格的に陸上を始め、県立新潟高校2年時に「女子800メートル走」で国体優勝した。秋田大学医学部進学後も陸上競技を継続し、大学5年生の2018年日本選手権では自己新記録のタイムで4位に入った。2020年春の医師国家試験に合格し、同大を卒業するも研修医としては就職せず、出身地にある新潟アルビレックスRCに入団し、アスリートとして五輪出場や日本新記録を目指している。
●河本龍磨(りゅうま)(鳥取大医学部3年):バレエダンサー
兄姉に誘われて4歳からバレエを始めた。現在は鳥取大学医学部に学びつつ、鳥取シティバレエに所属している。またツイッターで「とある医学生のバレエ練習日記@medical_ballet」で動画配信している。2019年には「第29回全国バレエコンクール in Nagoyaシニア男性部門」で優勝した。「将来はダンサーを助ける医者になりたい」とのことである。
ほかにも、1998年(京都大医学部6年時)にプロボクサーになった川島実氏(のちに僧侶の資格もとり、現在は東北地方で地域医療に携わる) 、2020年(徳島大学医学部5年時)にサッカーゲーム「ウイニングイレブン」の公式eスポーツ世界大会で優勝した医学生兼プロゲーマーの大西将統(まさと)氏、といった医学部+アスリートを実践するスーパーな文武両道な人が実在する。
かつて地方医大に進学すると、体育や芸術の稀有な才能を持っていた医学生でも中央とのつながりが断たれて孤立しがちで、せっかくの才能が埋没してしまいがちだった。
現在ではインターネットやSNSの発達により、地方に分散しても同好の士でつながったり、指導者にコンタクトを取ったりすることは容易になった。また、地方では街がコンパクトなので医学部校舎と体育施設の移動が首都圏に比べて容易であり、体育施設などの利用についても制限が少なく、「体育館の半分を1人占め」のようなぜいたくな使い方が低コストで可能なのだ。
今回、福岡氏が合格した順天堂大も、母校・筑波大同様に医学部とスポーツ健康科学部があり、鈴木大地氏など有名アスリートの出身校でもある。医学部メインキャンパスは東京都文京区、スポーツ施設は千葉県印西市となるので、医大生カリキュラムと競技生活を両立させるのは簡単ではないが、百戦錬磨のトップアスリートらしい集中力と体力で乗り越えてほしい。そして同級生にもポジティブな影響を与えつつ、唯一無二の素晴らしい医師になってほしいと願っている。