経済被害は東日本大震災の被害総額の10倍以上

その経済被害には220兆円を超えると試算されており、東日本大震災の被害総額(約20兆円)の10倍以上とも言われています。そしてこれらの震源域はきわめて広いことから、首都圏から九州までの広域に甚大な被害を与えると想定されているのです。

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南海トラフ沿いの巨大地震は、90~150年間おきに起きるという、やや不規則ではあるのですが周期性があることがわかってきました(図表2)。

こうした時間スパンの中で、3回に1回は超弩ちょうど級の地震が発生しているのです。その例としては、1707年の宝永ほうえい地震と、1361年の正平しょうへい地震が知られています。

実は、これから南海トラフ沿いで必ず起きる次回の巨大地震は、この3回に1回の番に当たっています。すなわち、東海・東南海・南海の3つが同時発生する「連動型地震」というシナリオです。

具体的に地震の規模を見てみましょう。1707年宝永地震の規模はM8.6だったのですが、近い将来起きる連動型地震はM9.1と予測されています。すなわち、東日本大震災に匹敵するような巨大地震が西日本で予想されるのです。

次の巨大地震は西暦2030年~2040年に発生する

なお、3つの地震は、比較的短い間に連続して活動することもわかっています。その順番は、名古屋沖の東南海地震→静岡沖の東海地震→四国沖の南海地震というものです。

過去の起き方を見ると、前回は1944年(昭和19年)の昭和東南海地震のあと昭和南海地震が2年の時間差で1946(昭和21年)に発生しました(図表2)。

また、前々回の1854年(安政元年)には、同じ場所が32時間の時間差で活動しました。さらに3回前の1707年(宝永4年)では、3つの場所が数十秒のうちに活動したと推定されています。

こうした事例は、今後の対策にも参考になります。すなわち、名古屋沖で地震が起きてから準備しようと思っても、間に合わない場合があるのです。もし数十秒の差で地震が次々と発生しては、対応のしようがまったくありません。

さらに、理由はわかっていませんが、過去の例では冬に発生する確率が高いこと、また南海トラフ沿いの巨大地震が起きる50年ほど前から、日本列島の内陸部で地震が頻発するようになる、といった事実も判明してきました。

実際、20世紀の終わり頃から内陸部で起きる地震が増加しています。たとえば、1995年に阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震のあと、2004年の新潟県中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、2008年の岩手・宮城内陸地震などの地震が次々と起きています。

巨大地震の起きる時期を日時の単位で正確に予測することは、残念ながら今の技術では不可能です。しかし、過去の経験則やシミュレーションの結果から、西暦2030年~2040年に発生するという予測がされています。