アメリカで「マスク着用」が真っ向から否定される理由
海外の支離滅裂なコロナ対策を示す好例が、マスクへの対応です。
日本人にはもともと「マスクをする」という習慣があり、インフルエンザが流行る時期や花粉症の季節にはマスクをする人が街中に溢れます。
ところが海外は違います。台湾や中国では、マスクはめずらしくありませんが、アメリカや欧州、オセアニアでは、マスクは真っ向から否定されていて、身につける習慣があるのは医療関係者だけでした。
マスクが否定されていた理由については後述しますが、いずれにしても、彼らにはもともとマスクをつける習慣がありませんから、新型コロナで死者が大量に出ても、マスク着用を頑固に否定する国が多かったのです。
世界最高の医療レベルといわれているアメリカでさえ、驚くようなことが行われていました。アメリカ政府のコロナアドバイザーで米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は2020年3月、マスク着用が感染防止になることを否定し、テレビやインターネット上で「マスクをつけるな」と言いまくりました。
アメリカ政府の新型コロナ対策はこのようなアドバイザーの意見を中心に設計されていましたから、当然のごとくアメリカ全土でマスクの着用は完全に否定されました。
ところが日本や台湾、韓国では死者が少なく、感染者数も伸びていないことから、4月以降にアメリカは突然、手のひらを返したようにマスク着用の重要性を強調しはじめたのです。7月に入ると、「店舗ではマスクを着用しなければならない」「交通機関でも着用するように」と、一気にマスク重要論を唱えるようになるのですが、東アジアに比べれば、なんと遅い対応でしょうか。
結果、感染が大爆発し、多くの人が亡くなりました。それでもアメリカでは謝罪する人は大変少なく、諸外国のメディアもなぜかこの件にはほとんど異議を唱えていないのです。
新型コロナにかかるのも個人の権利
さらにアメリカ人は、マスク着用を強制されると激怒していました。イギリスの調査会社YouGovの調べによると、公共の場でアメリカ人がマスクを着用している割合は2020年7月上旬の時点でも73%と、86%の日本や90%のシンガポールに比べて低めでした。欧州はもっと低く、イギリスについていえば、たったの36%、またオセアニア州のオーストラリアはわずか20%でした。
アメリカをはじめとしたマスクの着用率が低い国では、「マスクは感染防止に効果がない」と考える人もいれば、「政府が個人生活に介入すべきではない」「健康管理は個人の権利だ」と考える人も大勢います。東アジアの人にとっては、マスクをつけることは感染症予防のために仕方がない話なのに、欧米諸国では、マスクをつけないことは「個人の権利」であり、さらに新型コロナにかかることも「個人の権利」なのです。
「感染症は社会に対する脅威」「予防は社会に対する義務」と考える日本人からすれば、驚きの感覚です。
ちなみに、マスク着用の重要性に関する意見も人種や教育レベル、性別で異なっています。アメリカのピュー研究所の調査によると、アメリカでは61%のアフリカ系、63%のヒスパニック系がマスクをつけるべきだと述べているのに対し、白人だとたったの41%に過ぎないということも興味深い結果です。