「NO」と言うべきときに言えなくなってしまう
女の子に対するネガティブなイメージを植え付けられると何が起きるのか? 私が最も危険だと思うのは、「NO」と言うべきときに言えなくなることです。例えばパワハラ、セクハラ、モラハラ、DV、望まない性行為など、「NO」と言いたくても「女性は男性の言うことを聞くべき」「夫の言うことを聞くべき」「こんなふうに扱われるのは私が悪い」と感じて、「やめて」と言えなくなる。女の子のイメージに押さえ付けられて自分の気持ちを表現することができない。あえて自分を弱い立場に追い込んでしまいます。そうして自己肯定感はどんどん下がっていき、幸せを手放していくのです。
また頭の良い女性は可愛くない、意見を言う女性は生意気だ、女子力が低いのはダメ、男性より稼ぐ女性はダメ、など女性に対するイメージを全うしようとして、本来の自分はどうありたいのかを考えることがなくなります。そして自分の意思で何かを決めることができなくなり、求められる女の子のイメージを生きようとして自分を見失う。
最悪なのは、そこで終わらないことです。そんな生き方は確実に次世代に伝わります。そうして女の子の人生の負の連鎖が起こります。それを見て育つ男の子は「女性はそんなもんだ」と思ってしまいます。そこでもまた負の連鎖が起こるのです。
人は男の子として女の子として生まれるのではなく、人として生まれるのです。一人ひとりに同等の尊厳があります。その子本来の姿を掘り出してあげるのが子育てです。だからこそ、イメージを押し付けるのは危険だと思っています。
「女の子」らしい育て方をしなかった理由
わが家では私が妊娠中から、娘のスカイを「女の子」らしい育て方をしたくないと夫から言われていました。それはなぜか? 夫は自分より優秀だった姉妹がある年齢から急に大人しくなり、男性に頼り学歴もどうでもよくなって良い妻だけを目指すようになった姿を目の当たりにしてきたからです。
「女」というだけで生き方を限定してしまうことは、とてももったいないことです。だから娘にも「女の子」のステレオタイプを押し付けることで、自ら自分の可能性にフタをする生き方をしてほしくないと思い、「ジェンダーニュートラルな子育て」を実践してきました。
ジェンダーニュートラルな子育てとは「男の子なんだからこうしなさい」「女の子なんだからそんなことしちゃダメ」と性別にまつわるイメージを子どもに押し付けない子育て法です。性別自体が悪いのではなく、性別に付随するステレオタイプ(固定観念)の中で子育てをすると、子どもの個性を限定し、可能性を狭めてしまうからです。