戸建ての建物評価は20年後にはゼロになる
マンション価格との差額の拡大によって戸建ての資産性は上昇したかというと端的にそうとは言えない。それは本来の居住資産としての建物価値を無視して、20年後にはゼロ評価となってしまうからである。
不動産の銀行評価は新築時からの耐用年数で決まる。マンションは鉄筋コンクリート造で建物と土地が一体で評価され、47年の償却期間を基本とする。つまり、大まかに言うと、100%を47年で割るので、年間2%強の価値下落を想定する。住宅ローンの10年後の元本の減り方は約25%なので、資産の下落幅(-20%)よりも元本(-25%)の方が大きくなっており、含み益が出やすい状況にある。
これに対して、木造の戸建は22年の償却期間で、物件価格の半分が建物とすると、50%÷22年=2.3%となり、10年後に23%の価値下落になる。これだと含み益は出るかどうかが微妙な水準になる。20年後には建物価値はゼロ評価になり、土地代が残る。
しかし、その土地代も建物の解体費を差し引かねばならないので、売却価格はかなり安くなる。これは土地代が下がらなかった場合であって、土地価格まで下がると売るに売れなくなるので注意が必要だ。
これに加えて、建物価値を築年数で決めることから、リフォーム価値は何千万円かけてもほぼゼロ評価になってしまう。
戸建の資産性を下げない方法
戸建を購入する時に売ることを想定する人は少ない。そもそも売ることはない前提で買う人も多いが、現実に起こることは、転勤・転職・離婚・再婚・介護や世帯構成の変化などは望まなくてもやってきてしまう。
その際に、売るに売れない戸建は人生の足かせになりかねないことに加えて、多額の負債を残すことになる。そのリスクを軽減する方法は1つしかない。建物比率を小さくすることだ。
建物比率を少なくする方法はいくつかある。
そのためには、新築ではなく、中古戸建を購入するのは有効な手法の1つだ。気に入ったものを建てられない以上、気に入るものを丹念に探すことが条件になる。状態が良くて建物価値をほぼ見ていない価格設定ならば、減少する価値はほぼ土地代だけに限られてくる。
新築がいいのなら、土地代の割合が高い戸建を買う方法もある。新築であっても、土地代5000万円、建物代1000万円の6000万円の戸建なら、建物代の割合が少ない分、これも資産価値の目減りが少ない。
土地の値下がり幅が小さいなら、住宅ローンの元本の減り方の方が早いので、いつでも売ることができると考えられるからだ。しかし、土地価格を見極めないと落とし穴があるので、土地代が高いと安易に安心しては危険だ。