年齢を重ねると摂取できるビタミンD量は減ってしまう
図表2を見てください。70代の皮膚でのビタミンD合成能は20代と比較して75%程度に、80代になるとほぼ半分程度に、プロビタミンDの濃度が減っていることがわかります。これはつまり、高齢になると、同じ時間紫外線を浴びても、十分なビタミンDを作ることができなくなるわけです。そのため高齢者の方は、積極的にビタミンDのサプリメントを摂取する必要があります。
また、年齢だけでなく、肥満の人は脂肪のなかにビタミンDが溶け込んでしまうために血中濃度が上がりにくくなるなど、体質によって個人差があります。
同じ年齢で同じ紫外線量を浴びても、血中ビタミンD濃度は一人ひとり違ってきます。自分はどのくらい紫外線を浴びれば、どのくらいビタミンDが作られるのかを確かめるためには、血液検査で確認する必要があります。
「日光浴は健康によい」をもう一度広めよう
今でこそ「紫外線をカットすべき」という情報の影響で日光浴が避けられるようになってしまいましたが、以前は日本でも「日光浴は健康によい」と考えられていました。
日光浴の健康効果は1840年頃から注目されるようになり、特に結核感染が広がった時期には、サナトリウムと呼ばれる結核療養施設で一定時間の日光浴をすることが、治療の一環として採用されていました。
そのメカニズムは長らく解明されていませんでしたが、2006年に「ビタミンD投与により、マクロファージ内にカテリジンという抗菌ペプチドの一種が作られ、これが結核菌の増殖を抑える」ということが報告されました。つまり、日光浴によって血中ビタミンD濃度が高まることで、結核菌の増殖を抑えていたのではないかということが推測できます。
抗菌作用と抗炎症作用を併せ持つ、ビタミンDの免疫調整作用によって、感染症に対抗する力が高まるのではないかということは容易に想像がつきます。