都構想が実現すると、財源は市に集中するか

大阪市の人口は、政令指定都市の中で横浜市に次いで全国2番目に多い274万人(20年4月1日現在)という大所帯です。そのような自治体で窓口が1カ所では、どうしても住民サービスが十分に行き渡らないことを市長時代に痛感していました。橋下徹元大阪市長が就任するまでは、市立中学校に給食サービスすら提供できていませんでしたし、市立小中学校にクーラーも設置されていませんでした。なぜかというと、橋下氏が就任する以前はあまりにも市長が市民から遠すぎたんです。現場から遠いと無駄も見えにくくなるという難点もありました。

吉村洋文大阪府知事

都構想反対派の中には、「市の財源が府に吸い上げられてサービスが低下する」という声もありますが、僕は逆に充実していくと思います。大阪を成長させていくには、当然ながらまず都心部である現在の大阪市に重点的に投資していくことになるからです。都心が成長すると、税収が増えて雇用も増えます。大阪市は周辺市から通勤している人が多いので、そこが成長すればその周辺市も潤う仕組みになっています。

ですから大阪市民の皆さんは、むしろ今まで府知事があまりにも市域の成長に投資してこなかったことに怒るべきだと思うんです。これまでの二重行政では、そこは仕方ない部分があるのですが。19年、府知事選で争った小西禎一氏は、「都構想が実現すれば、投資が市内に集中してしまう」と討論会で主張していましたが、僕もそれは感じています。逆に言うとそれだけ市民のメリットが大きい改革なのです。

12年に立ち上げた「グランドデザイン・大阪」という府・市共通戦略でも、投資先は市内に集中しています。万博やIR誘致に向けて夢洲を開発していますし、梅田駅北の最後の超一等地「うめきた」エリアの第2期エリア「うめきた2期」の開発にも府・市一体で取り組んでいます。

また、府・市で統合した公立大学の新しいメインキャンパスも大阪市内に移転しますし、北梅田駅から浪速区のJR難波駅および西成区の新今宮駅を結ぶ予定の「なにわ筋線」の工事も進んでいます。成長する都市に必ずある環状線については、淀川左岸線の延伸部などに代表されるように、大阪市をまたぐ道路について府と市の費用負担の関係から未完成でしたが、それも事業化が決まり着実に整備が進んでいます。

これらの「バーチャル都構想」の成果でもわかるように、投資先のほとんどは市内なのです。都構想が実現して大阪が成長すれば、財源が増えて現市域の住民サービスもより充実するという好循環が起こります。大阪維新の会が成立してからの10年間で法人税収は約1.7倍に増え、塾代助成事業や18歳までの医療費助成を進めることができたことでも示されています。