新任教授の相場は「年収450万~750万円」あたり

ところで、中国の大学というと、昨今のバブリーな印象からすごい給与をもらっていると誤解されるのですが、「一般論として中国の大学教員の給与はそれほど高額なものではない」という事実があります。そういった印象論の背景にはおそらく10年、20年前くらいの「日本のメーカーを定年退職した技術者が中国や韓国のメーカーへ高給で引き抜き」といった過去のニュースが影響しているのかもしれません。

実際のところ、大学の場合、古参の大学教員の給与が年10万元(約150万円)程度というのも珍しくありません。研究大学において給与が高めに設定されている新規採用の教授であったとしても、私の分野の場合、5年くらい前の新任教授の相場は年30万~40万元(約450万~600万円)、最近でも年30~50万元(約450万~750万円)あたりの額を聞くことが多いです。中国における平均年収、物価を考慮すると決して低い額ではありませんが、欧米や日本における大学教授の賃金相場と比べるとまだまだかなり低い状況です。

「中国の大学だけ」に応募した人は少数派

日本から中国に来ている基礎研究者の実態としては、「中国における高給に惹かれて」というちまたに流布しているイメージではなく、国立大学の法人化以後、日本における基礎研究者の教員採用が継続的に削減されているという事実が、中国を含め海外の大学への応募を後押しする間接的な要因とはなっているのではないかと思います。実際、中国に来ている日本人の大学教員の話を聞いても「中国の大学にだけ」に応募したという人より、「欧米や日本の大学にも」応募した人のほうが圧倒的多数です。

以上をまとめると、「中国における基礎研究のレベルが近年上昇し、大学教員の採用も高水準が続いている一方、日本における基礎研究者の研究環境が悪化している。そのため、中国における大学教員の待遇が必ずしも破格というわけではないが、日本人の基礎研究者が研究のチャンスを求めて海外の大学に応募する際、中国の大学『も』選択肢の中に徐々に含まれるようになってきている」という状況だと私は考えています。