男性の被害さえも覆い隠してしまう「控訴合戦」
2018年に韓国性暴力相談所が発表したレポートでは、逆告訴はもはや単なる怨恨を超え、一つのマーケットを形成したと指摘している。実際、韓国国内では「無罪を勝ち取ります」と掲げた“逆告訴専門弁護士”らが増えており、加害者に「まずは反省の色を見せる」などと説いたマニュアルを作っている。着手金として日本円にして15万~30万円の場合が多いが、実際には、そこからあらゆる理由をつけて、報酬を吊り上げていくことも多いようだ。
こうした訴訟合戦は、男性の正当な被害さえも覆い隠してしまう。とある韓国人男性は、合意の上での性行為を後日「レイプされた」といって告訴されたと言う。その男性の友人は次のように語っていた。
「女性から彼を誘い、二人で仲良くホテルに入るところまで僕は見ています。法廷でもそのように証言しました。友人一同も、彼のために地方まで出向いて裁判を傍聴しました。でも証拠不十分で敗訴し、女性に大金を支払うことに。思い出すと、自分のことのように悔しいです」
ベッドルームで男性が豹変し、それで女性に怪我を負わせた、ということでもなかったという。友人は、「逆告訴の風潮が、結果として男性側の控訴や反論は『不適切なもの』として扱われることに繋がっているのだと思う」と述べる。
女性嫌悪の核にある「恋愛と結婚」
なお慶熙大学校がソウル市内の男性大学生270人を対象に行った調査研究では、女性嫌悪の核に恋愛と結婚があることが示唆されていた。
現在の韓国社会では、階層がほぼ固定化し、経済的に同じレベルでしか結婚しにくい状況にある。そうして経済構造的に劣位におかれた若年層男性が無気力感、劣等感を募らせた結果、女性嫌悪が増大しているのでは、と分析している。
そもそも韓国の20代の男性たちが「女性のほうが自分たちよりも優遇されている」と感じていることは否めない。
たとえば韓国女性政策研究院が2018年、19歳以上60歳未満の男性3000人(うち20代男性1000人)を対象にしたオンライン調査では、20代男性の半数が敵対的性差別意識および反フェミニズム意識を持っているとされ、彼らが女性に対して「平等という言葉を盾に多くを要求し、男性嫌悪をしている」と認識していることが分かった。
さらに彼らは徴兵に対する被害者意識を持ち、軍隊は時間の浪費で、損失と捉えており、結果として「男性だけ軍隊に行くのは男性差別で、女性も行くべきだ」という認識を強く持っていた。また他世代に比べて、性風俗などに興味を示さない傾向がみられ、逆にオンライン上での女性嫌悪的書き込みに接する機会が多かったとされる。