「全てが血縁ベースの社会になっているのが苦しい」

今が幸せだからこそ、自分を苦しめてきた家族とは縁を切りたいし関わりたくない──。その考えは二児の父となり、妻と子供と幸せな家庭を持った今も変わらない。

菅野久美子『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)

「全てが、血縁がベースの社会になっているのが苦しいんですよ。だけど、自分の家族も行政もそれが当たり前だと思ってる。そういう意味で、家族は捨てられないのがやっかいだと思うんです。本当のことを言えば家族は全部捨てたいんですよ」

良太を苦しめるのは、亡くなった父親だけではない。良太は酒に溺れ、10年以上会っていない母親とも、その関係を清算しようと考えていた。良太にとって家族とは、まとわりついて離れない生霊のようなものなのだ。自立心のない母親にも、散々振り回されてきた。血縁というだけでその始末が自分に降りかかり、その度に良太は過去のトラウマを思い出し、仕事に手がつかなくなることも度々あった。

良太はかつての家族を清算することで、初めて自分が守るべき、家族と向き合おうとしていた。

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