成功し感謝するからお参りに足が向く
もっとも、「ニワトリが先か、卵が先か」と同じ論法で、社会的成功を収めているからこそ、「自分は運がいい」と思っているとも考えられる。しかし、精神科医でもある作家の樺沢紫苑さんは、「自分は運がいいと思うことが先です。信じる者が救われるものなのです。それが成功する人の共通点ともいえるでしょう」といい切る。
樺沢さんが注目するのは、運がいい派のポジティブ思考。「運がいいと思っている人は、何ごとにも積極的に、前向きに行動するようになり、チャンスも摑みやすいのです。それが結局、自らの運命を切り開くことになるわけです」と樺沢さんはいう。それに対して運が悪い派は、「どうせうまくいかないだろう」という諦めが行動を邪魔して、チャンスを逃しやすいというのだ。
たとえば、英国の心理学者であるリチャード・ワイズマン博士の研究によれば、運がいいと思っている人ほど、懸賞に当選しやすいという相関関係があることがわかった。しかし、懸賞に当選しやすいから、運がいいのではなく、実は、運がいいと思っているとより多くの懸賞に応募するため、当選する確率もアップするのだという。
ところで、運がいい派が成功しやすいとすれば、運がいい派は信仰心も強いわけだから、「信心深い人=成功しやすい人」という構図も成り立つのではないか? 樺沢さんは「信仰心の強さは、社会的成功の確率と比例すると考えていいでしょう」と断定する。
「信心深い人とは、周囲への感謝の念が強い人だといえます。信心深い人が寺社仏閣に足しげく参詣するのは、苦しいから神頼みをしているのではなく、日頃の神仏の恵みに感謝するのが目的なのです。そういう人は、自分の力を過信したりせず、周りの力もあって、自分は生かされているのだと考えます。したがって、周りのステークホルダーからサポートを受けやすくなり、成功する可能性が高まるというわけです」(樺沢さん)
島田さんは、「一流の経営者にも、信仰心の強い人が少なくありません」と強調する。その代表格が、パナソニックグループの創業者である松下幸之助氏。東京・浅草寺に雷門の大提灯を寄進したほか、全国各地にある工場には「龍王」を祭っていることがよく知られている。
「人間の力には限りがあり、どんなに優秀な経営者も、万能ではありません。一流の経営者は、それを知り尽くしているからこそ、人知を超えた存在に拠りどころを求め、精神的な安らぎを得る。とりわけ、逆境に立ったとき、信仰心の強い経営者には、ブレない強さがあります。それゆえ、成功しやすいのでしょう」と島田さんはいう。