地元の先輩から「ちょっと舐めてみる?」と言われ…

Aによると、シンナーを吸う方法には瓶、ペットボトル、ティッシュなどがある。ガスはライターの詰め替え用のガスをそのまま吸うか、ビニールに移してから吸う。本人いわく「いろんな薬物に興味があったんだよね。ガスとシンナーは薬物じゃないけど。あと、せき止め薬のブロンも使っていた」という。ガスについては「シンナーより早く幻覚が見える。でも、人によって違うかもしれない」と説明する。

Aが覚醒剤をやるようになったのは、地元のヤンキーグループの先輩から「渡すものがあるから一緒に車で行こう」と誘われたからだった。何をくれるのかと聞いたら覚醒剤だという。先輩から「ちょっと舐めてみる?」と実物を渡され、舐めてみたけれど「苦いだけだった」。覚醒剤の量によっては、舐めるだけでも効き目はあるそうだ。そのため、本当に“ちょっと”だったのか不明であるし、もしかすると本人が覚醒剤に強い体質だったのかもしれない。

その先輩は、那覇市辻にある性風俗店で働いていた。Aはまたもや先輩と会った時に、性風俗店内のトイレに呼ばれ、今度は“あぶり”をやっている姿を見る。覚醒剤には、注射器を使う方法と、アルミホイルや瓶に入れて火であぶり、煙を吸う方法がある。先輩に「お前も吸ってみろよ」と勧められ、Aはそこでも覚醒剤に手を出してしまった。

最初のうちはハマることはなかったが、誰かと会うたびに覚醒剤を吸うようになってから、少しずつハマっていったという。ついには自分の方から「シャブないですか?」と先輩に聞くようになった。それをAは「知らず知らずにハマっていったのかな」と話す。

なぜ「覚醒剤に興味がなくなった」のか

そうしてシャブにハマり始めてしばらくたった後、今度は「売りをやらないか?」という話が同じ先輩からまわってきた。そして、言われるがままに覚醒剤の売人を始める。この頃にはもう、自分でも覚醒剤をやめられなくなっていた。そのうち、「組織(暴力団)から自分で引いて(仕入れて)、客に売らないで自分でやるようになって、いつの間にかやめられなくなった」とAは語る。

その後、Aは覚醒剤取締法違反(使用)とは別の容疑で逮捕された。懲役1年9カ月の有罪判決を言い渡され服役することになった(現在は出所している)が、この懲役がきっかけで覚醒剤の依存症から抜け出せたという。

写真=筆者撮影
那覇地方裁判所(那覇市)