第4条2項は、労働契約をできるだけ書面で確認するよう求めており、第7条は、就業規則が従業員に十分に知らされていれば、その就業規則に定められた内容が、そのまま個別の労働契約の内容になると定めている。しかし、就業規則を変更したからといって、一方的に、従業員にとって不利な方向へ労働契約を変更(賃金カットや勤務時間の延長など)することはできないと定めるのが第9条である。

実際の運用の点で賛否両論あるのが、第10条。「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」は、労働契約を従業員にとって不利に変更しても構わないと書かれている。第9条の例外規定である。

ほかにも第15条(懲戒)や第16条(解雇)にも「合理的」なるキーワードが採用されている。もちろん会社や株主の都合にとって「合理的」という意味でなく、社会一般の価値観からみて、ということではあるが、それでも、どのような場合に従業員にとって不利益な変更が有効といえるのか、お世辞にも読み取りやすいとはいえない。1997年に出された最高裁判決(第四銀行事件)の理由をひもといても「我が国社会における一般状況等を総合的に判断すべき」と、ますますボンヤリした言い回しになっているのは心細い。

東京労働局によると「このままでは会社が倒産してしまうのでやむをえず実施するとか、従業員への説明が尽くされているか、などの要素を斟酌するので、恣意的な不利益変更に対する歯止めとしては機能する。たしかに抽象的な基準だが、会社側の言い分をよく聞いたうえで、具体的な問題が生じたら、相談窓口に問い合わせてほしい」とのことである。

(ライヴ・アート= 図版作成)