理科や社会を子供と共に学び模造紙にその内容を書きだした母親

算数や国語は塾任せだったが、理科や社会は自分自身も学び直しをする感覚で一緒に勉強し、まとめた模造紙を壁に貼ったのだ。Sくんにとってその模造紙は、“ママが勝手に作っているもの”。ときにイラストや図を「上手に描けたね」とSくんに褒められるのがうれしかったと母親は笑う。

もともと、夫婦で「子供の人生は子供のもの」という意見で一致していた。レールを敷くのではなく、子供のやりたいことをサポートするのが親の役目だと。ただ、同時に子供の視野を広げるのも親の重要な役目と考えていた。小学校低学年から「パイロットになりたい」という夢を持つSくんに、社会の仕組みや将来を見据えた進路の考え方など、できる限りの情報を与え、最終的には本人に判断させながら進んできた。

中学受験に関しても同様だ。

学校の勉強の補助にと、小学2年生のときに買い与えた大手進学塾サピックス発行の算数ドリルなどに夢中になったSくんが「塾に入りたい」と言い出し、3年生から入塾させた。

Sくんにとって当時の塾は“楽しい習い事”のようなもの。嬉々として通うなかで自然と中学受験にも興味を持ち、文化祭を見学した渋谷教育学園幕張中学校に入学したいと言い始める。

その頃から、本格的に中学受験を目指すようになった。母親は「あくまで本人の希望が優先なので、もし本人が気に入る学校がなかったら、中学受験はしなかったと思います」と話す。

塾講師の“モノマネ”で国語の成績が飛躍的に伸びた

母親だけではなく、Sくんも「中学受験は楽しかった」と話している。母親はその理由を「常にどうしたら楽しく勉強できるか?」と考えてサポートしてきたからではないかと考えている。

たとえば、理科の天体分野が苦手だったSくんのため、ホームプラネタリウムを購入。寝る前に天井に星空を映し出し、親子で楽しむなかで苦手意識を払拭していった。また、幼い頃に子供用の包丁を買い与えたことがきっかけで、今でも「料理は化学反応だよ」と親にオリジナルのハンバーグソースを作ってくれるほどの料理好き。その料理好きが、結果として理科好きにつながって行った面は大きいと言う。

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さらに4年生まであまりパッとしなかった国語の成績が伸びたのは“モノマネ”がきっかけだった。塾で5~6年に受け持ってもらった国語の先生が大好きだったSくんは、自宅でよく先生の話し方や仕草のモノマネをしていたという。

そこで母親が「今日の授業を再現してみて」と声をかけて再現授業をさせているうちに、だんだんと国語の成績が伸びて行ったそうだ。

「息子が楽しげにモノマネする様子が愉快だったので、いつも授業の再現をしてもらっていたのですが、気づけば本人の成績が伸びていて思わぬ副産物でしたね」