したがって、親も、子どものことをよく理解し、子どもの気持ちや考え方を受け入れられるように、心がけなければなりません。本書でカーネギーも、次のように述べています。

「人を非難する代わりに、相手を理解するように努めようではないか。どういうわけで、相手がそんなことをしでかすに至ったか、よく考えてみようではないか。そのほうがよほど得策でもあり、また、面白くもある。そうすれば、同情、寛容、好意も、自ずと生まれ出てくる」

命令を質問に変え、受け入れてもらう

人間は、きわめて自尊心が強い生き物です。たとえそれが相手のためであっても、押さえつけようとすれば、必ず反抗してきます。たとえ親でも、子どもを動かしたいのなら、力ずくで動かそうとしてはいけません。カーネギーは、こうもいっています。

「議論に勝つ最善の方法は、この世にただ1つしかないという結論に達した。その方法とは――議論を避けることだった」「他人の間違いを指摘するような真似は、いっさいしないことに決めた」

つまり、まず相手の立場を尊重することこそ、相手の心を開かせ、聞く耳を持ってもらうための最善策だと、カーネギーは説いているわけです。さらに、「命令を質問の形に変えると、気持ちよく受け入れられるばかりか、相手に創造性を発揮させることもある。命令が出される過程に何らかの形で参画すれば、誰でもその命令を守る気になる」と述べ、相手の心を傷つけずに自然な形で「気づき」を与えるノウハウも、カーネギーは本書のなかで披露しています。

最後に、読書で1つ注意していただきたいのは、「善は急げ」ということです。『人を動かす』で紹介された方法で、何か自分で試したいやり方があれば、どんどんトライしてみてください。あとは子どものことを信じて、辛抱強く働きかけていくのです。

(構成=野澤正毅)
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