学習初期にテストを受けたほうが、教育効果が高い

【西内】本当にそう思います。あとはテストをうまく使うのもいいかなと思っています。実は最近の教育に関する研究で、まったく答えられなくても学習初期にテストを受けたほうが、そのあとの教育効果が高いというデータが出ているのです。

わからないならわからないままでいいので、とりあえず受ける。すると現状の課題を認知できますよね。「Aはわかったけど、Bがわからない」というのであれば、当然Bに力を入れて勉強すればいいし、「AもBもわからない」というのもひとつの気づきです。「これは相当気合を入れないといけないぞ」のような。その状態で授業を聞いた方が、聞くべきポイントがわかっているので頭に入りやすいのではないかと考察されていました。

【三宅】データに基づいていると言われると説得力がありますね。実際、当校でも「もう少し勉強してからTOEICを受けます」という生徒さんは多いですし、世の中的には「もう少し勉強してから英会話スクールに通います」という方もいらっしゃいます。

【西内】そうですよね。たしかにTOEICのような1日仕事になってくると、ダメな自分を自覚するためにわざわざテストを受けることに抵抗を感じるのは何となくわかるのです。だから理想は、TOEICやTOEFLの点数との相関性が高い、30分くらいで受けられるテストでしょうね。4技能をすべてカバーしていて、今の実力でTOEICを受けたらだいたい何点くらいとれるかがわかるようなものです。

それがあれば、学習の最初だけではなく、3カ月に1回くらい受けてみようかなと思う人もいると思いますし、その結果がじわじわ上昇していけばやる気も増すと思います。イーオンさんのような規模になれば自社で開発できるのではないですか。

英語を勉強すれば、認知症になりにくい?

【三宅】さっそく検討します。英語の勉強をすることのメリットがわかるデータなどはありますか?

【西内】例えば、母国語ではない言語を学ぶと母国語の方も上達したり、数学のスキルが向上したり創造性が高くなったりするのではないかとデータから示唆されています。普段は使っていない筋肉のようなものが頭の中にあり、それが外国語を学習することで活性化するのかな、と自分は理解しています。

あとは他人への共感力が高くなるとか、認知症になりにくいというデータもあったはずです。

【三宅】いろいろあるのですね。認知症のデータについて素朴な疑問なのですが、そもそも英語を学習している高齢者の方が前向きな生き方をしているから認知症率が低いという見方もできませんか?

【西内】いや、そこについては元々の認知機能や収入、職業といった条件を揃えたうえでグループを分けて、それでもなお英語を勉強したほうがいいという研究であったと思います。

【三宅】なるほど。

【西内】そういえば、小さい頃から子どもに英語を教えると認知機能が下がるという説をたまに耳にしますよね。実は最近、反対意見が出ています。流布されている説はアメリカで研究されたのですが、結局、アメリカで子どものころに英語を勉強してる外国人の多くは大半がヒスパニックの移民の子どもたちなのですよ。要は家庭環境や経済状態の要因が大きいのであって、別に英語を勉強したせいではないという考え方です。

【三宅】やはりデータというものは気をつけてみないといけないということですね。

【西内】本当にそうですね。ということで、いまは心おきなく自分の子どもに英語を勉強してもらってます(笑)。