自信を取り戻す、唯一の方法

もう少し、昔話におつきあいいただきたい。

私は、塾の方針を大きく変えた。学習指導でガミガミ言うのは止め、時間も最小限にした。そして、彼らが自分をダメだと感じない、楽しい空間づくりを心がけた。とにかく、みんなで一緒に遊んだ。友達がいなかった子供たちは「やっと居場所できた」と感じてくれるようになった。

ところが、「先生のところに来たら楽しいけど、朝起きるのが面倒だから、もう来ないかもしれない。親にガミガミ言われるのは嫌だけど」とある生徒がため息をついた。私はつい、「じゃあ、うちに泊まれよ」と言ってしまった。そんなこんなで、多いときには15人が狭いわが家で暮らすことになった。思わぬ形で始まった合宿だったが、子供たちのよくない習慣がもっと見えるようになった。

写真=Adobe Stock

たとえば、あいさつをしない。「おはよう」だけは言えるよう、私から声をかけ続けた。玄関は荒れ放題だから、「靴だけはそろえよう」と、これはルールにした。また、多くの子は座る姿勢が悪かった。だから、椅子から背もたれを外した。みんな朝が苦手だから、ジョギングに誘ってみた。ついでに腕立て伏せや腹筋運動を、ゲーム感覚で競い合って楽しんだ。成長を褒めてやると、子供たちは自ら動くようになっていった。

しばらくして、生徒の1人が「プロのドライバーになりたい」と夢を語り始めた。のちに彼は、自動車関係の短大に入学し、ソーラーカーコンテストに出場して日本一になる。卒業式では答辞を読んだ。多くの生徒が、ゆっくりと自信を取り戻していった。この経験は、私にある教訓を刻み付けた。「環境と習慣を変えないと、人は変われない」と。

「集める」のではなく「集まる」

塾をつくったころ、私は「どうやって生徒を集めるか」「どうすれば優秀なスタッフを集められるのか」と、「集める」ことばかりを考えていた。ところが、子供たちが生き生きとしていられる環境を整えたら、自然に生徒が集まるようになった。「集める」と「集まる」は、まったく違うことを学んだ。「なぜ、客が来てくれないのか」とか「なぜ、優秀な人材が集められないのか」と悩む経営者は多いが、先にやるべきことは「集める」ことではなく、「集まる」環境をつくることなのではないか。

「トイレ掃除で会社は変わるのか」という問いに対し、私は「変わる」と確信している。これまでに約200社を直接指導してきたが、掃除を徹底し、環境を変えることで、例外なく業績が上向いた。多くの会社が、「集める」から「集まる」への変化を経験している。そして、社長も社員も、よい環境のなかでよい習慣を身につけることができた会社は、大きな成長を遂げる。その代表的な事例を紹介しよう。