だが自動車とは事情が異なる点も。自転車による重大事故は示談が成立しにくく、裁判までもつれたとしても、判決どおりに賠償金が支払われない傾向がある。

「自動車は自賠責保険の加入が義務付けられたり、任意保険に加入していますが、自転車の運転者の多くは無保険。そのため後遺症が残る事故や死亡事故になると、損害賠償額が加害者の支払い能力を超え、結局、被害者がやられ損になるケースが後を絶たちません。こうした悲劇を生まないために、自転車の運転者には、自転車保険や個人賠償責任保険への加入をお願いしたいです」(谷原弁護士)

ちなみに保険会社以外でも、自転車安全整備士のいる自転車店で「TSマーク付帯保険」に加入することができる。賠償責任補償は最高2000万円で、費用は年間1000円。自転車に乗る人は、選択肢に加えておいて損はないだろう。

もう1つ、自転車の運転者が意識すべきは、道路交通法(以下道交法)の遵守。自転車は免許制ではないため、運転者が道交法を学ぶ機会は少なく、無意識のうちに違反していることも珍しくない。

例えば歩道を走る自転車。自転車は道交法で軽車両と規定されているため、車道の左側を走るのが原則だ。標識等で通行が許された歩道は走行可だが、それ以外の歩道は押して歩く必要がある。

自転車の前後の補助イスに子供を乗せる3人乗りも、道交法違反。現在、育児支援の観点から安定した構造の自転車に限り容認することが検討されているが、現時点では違反行為になる。

「道交法違反は、それ自体で罪に問われますし、悪質な違反は刑事で重過失致死傷罪が適用、民事でも過失相殺の認定において被害者側の過失割合が低くなり、賠償額の決定に影響します。わが身を守るためにも安全運転が必要です」(同)

(ライヴ・アート=図版作成)