自社努力だけでは問題は解決できない
自社努力だけでは、問題は解決できない。私たち消費者には、安価でたくさんの選択肢の中から商品を選択するという消費行動が染み付いている。この見直しも必要である。さらに、取引先を含めた産業全体の取引の在り方を抜本的に見直す必要である。
それが実現しなければ、メーカーもサプライヤーも疲弊し、様々な活動の努力をしても原価低減分は費用や損失の発生で帳消しになり、収益性は一向に橋上しない。わが国製造業の競争力はメーカーとサプライヤーの協業によって支えられているが、サプライヤーの犠牲のもとにメーカーが成り立つという構造のもとでは、協業体制の維持は極めて困難である。とりわけ、日本経済全体への影響力の強い自動車産業では、メーカーとサプライヤーの間に存在するビジネスシステムの総点検をし、共存共栄が実現できる新たなシステムの構築が急務である。
原価低減成果が出ているのに、収益性が向上しないという状況は、極めて異常だということを改めて確認する必要があるだろう。
同志社大学大学院ビジネス研究科教授(神戸大学名誉教授、博士(経営学))1953年8月兵庫県生まれ、78年神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了(経営学修士)、99年神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年同大学院経営学研究科研究科長(経営学部長)を経て12年から現職。専門は管理会計、コストマネジメント、管理システム。ノースカロライナ大学、コロラド大学、オックスフォード大学など海外の多くの大学にて客員研究員として研究に従事。