格差社会を是正するためにトマ・ピケティ氏は富裕層に対する累進課税、資産税の強化をと主張し、ビル・ゲイツ氏はロボットの働きに対して税金をかけるべきだと言っている。大失業時代の社会システムとして、多いのがベーシックインカム(BI)の導入をという意見だ。鈴木氏はその財源にAI、ロボットにも給料を支払い、それを国民に分配するというユニークな解決策を主張している。
「かつて正社員にしか任せられなかった仕事が、今ではアルバイトでもできる時代です。正規雇用と非正規雇用の同一労働同一賃金が問題になっていますが、人間の10分の1のコストでAIやロボットが働いているのだから、そこまで含めないと本当の解決にはなりません」(鈴木氏)
最適な富の再分配こそAIの仕事かもしれないと言うのは林氏。
「資本主義というシンプルなルールは人間でも扱えましたが、社会主義的なものになると、人はバイアスの塊なので、自分たちではうまくコントロールできません。AIの情報収集能力が向上し、人間というものの理解が進めば、最適な富の傾斜配分の仕組みがつくれるかもしれません。『ホモ・サピエンスという生体システムはこのぐらいの配分にしておくとやる気を出す』というようなクラスタリングは得意ですから。僕らが幸せを感じるのは何かを診断してくれるものとしてAIは存在する可能性はありますし、もしかしたらそれこそが、AIの最大の仕事なのかもしれません」
今世紀の人類は、AIやロボットと共存し、仕事を分担しながら働くことになるだろう。そして拡大する格差をどう是正するのか。真剣に考え実行しないと、未来が不幸で惨めになることは間違いない。
なくなる:営業部、中間管理職 残る:営業マン
顧客を回り、現場の情報を集める営業マンの仕事はなくなりにくい。
なくなる:経理部 残る:総務部
労務管理はAIが担うだろうが、気配りが必要な総務の仕事は残る。
なくなる:経営企画部 残る:苦情対応係
苦情への対応、謝罪などは、ロボットの対応では納得されない。
なくなる:マーケティング部 残る:開発研究部
マーケティングはAIの得意分野なので、導入も早いと思われる。
なくなる:法務部 残る:CSR推進部
知的財産の所有権や判例など膨大なデータの検索はAIが得意。
なくなる:秘書室 残る:お抱え運転手
自動運転車が進むなか、お抱え運転手を雇い見栄を張る社長も登場?
※取材を基に編集部で作成
1973年、愛知県生まれ。トヨタで「レクサスLFA」、トヨタF1開発のプロジェクトに携わる。2012年、ソフトバンク入社。人型ロボットPepperの開発に取り組む。15年独立し、ロボット・ベンチャー「GROOVE X」を設立。
鈴木貴博
1962年、愛知県生まれ。東京大学工学部卒業。ボストンコンサルティンググループ等を経て、独立。企業のコンサルティングに従事するなかで、人工知能がもたらす仕事消滅の問題とかかわるようになる。著書に『仕事消滅』ほか。