「基幹商品になるような本格的なものにしよう」

会議前に斉藤さんは、厳しいアンケート結果を見ることになる開発チームを気遣って一番高い弁当を用意したという。

ややこしい仕組みをわかりやすく説明するために、図を描く技術屋・中山さん(写真中)。商品開発・斉藤さん(写真左奥)は、10年も先輩にあたる中山さんに技術面の課題について遠慮することなく指摘した。

「ほとんど咽を通らなかったですね。複雑な構造で芯を動かしているんだから多少ぎくしゃくしてもいいじゃないかと内心思っていたし、当時は100点に近いものを出したつもりでいました。しかし、これではダメだと宣告された。はじめは感情的になって反発したけれど、どうしても商品化にこぎつけたいので、冷静に改善策を話し合いました。そして、問題は書き味であり、書き味さえ改善すれば商品化できると僕らの宿題がはっきりしたのです」(中山さん)

待ったをかけた商品開発部も、企画自体をなくそうとは考えていなかった。

「回転シャープのアイデアはやはり斬新で魅力的。時間がかかってもいいから完成度を高めて、三菱鉛筆の基幹商品になるような本格的なシャープとして世に出そう。この会議で、はっきりと共通認識ができあがった気がします」(斉藤さん)

試作品をそのまま商品化する「なあなあ」な方向に流れず、あえて踏みとどまって品質向上に努める。この会議での意思決定が「クルトガ」の大ヒットにつながったのは言うまでもない。