部活動は、みずから積極的に関わりたくなるような、魅力ある活動である。だからこそ、歯止めがかからなくなる。みずから進んで活動し、そして楽しくて夢中になるからこそ、過熱していく。文部科学省はかつて、文部省の時代の1997年に、中学校では週に「2日以上」、高校でも週に「1日以上」の休みをとるよう指針を示しているが、そこから20年の間、部活動はむしろ過熱してきたくらいである(拙稿「『部活週2休』有名無実化」)。
気がついてみると、土日もお盆もお正月も、部活動に参加している自分がいる。部活動の「魅力」はすぐに、「魔力」へと転化する。「やりがい」が「搾取」につながるのと同じ構図である(「拙稿「"ブラック部活"と"やりがい搾取"」)。
交錯する「強制」と「過熱」
部活動の改革を訴えている先生には、部活動が大好きな、あるいは大好きだった先生がたくさんいる。夢中になって部活動を指導してきたのだけれども、ふとしたときに気づくというのだ――「このままではいけない」と。
部活動の現状を苦役や強制の側面だけに注目して問題視するだけでは、いま起きていることの半分しか照らし出せない。部活動は、単なる苦役や強制ではなく、みずからハマっていく「楽しみ」でもある。
部活動というのは、基本的に制度上は「自主的な活動」である。だが現実には、自主的どころか強制的になっている。その一方で自主的とされているからこそ、歯止めがかからずに過熱していくことにもなる。「自主的な活動」をめぐる、この「強制」と「過熱」の仕組みを明らかにして、議論を整理していくことが、これからの部活動のあり方を考えるうえで、不可欠な作業なのだ。
名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。1976年生まれ。名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士課程修了。専門は教育社会学。日本教育社会学会理事、日本子ども安全学会理事。ウェブサイト「学校リスク研究所」「部活動リスク研究所」を運営。著書に『ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う』(東洋館出版社)、『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』(光文社新書)、『柔道事故』(河出書房新社)などがある。Twitterアカウントは、@RyoUchida_RIRIS