【2】保険で備え vs 投資で殖やす

▼「貯蓄にもなる保険」は現役世代の最悪手

「保険で老後に備えたい」という人がいる。これは保険の使い方として間違っている。保険とは、大勢の加入者が少額の保険料を支払うことで、事故や病気などの大きなリスクを分かち合うものだ。収入が途絶えたときの備えとして現役世代には有効だ。

しかしリタイアを迎えた人は、もう働いておらず、就労による収入は途絶えている。「もし働けなくなったら」という心配をする必要はない。

保険会社はリタイアまでだけではなく、リタイア以後の安心もカバーするために「貯蓄にもなる保険」を売り出してきた。これは支払い先をまとめられるという点では便利かもしれないが、どこまでが保険で、どこからが貯蓄なのかがわかりづらい。

また「貯蓄にもなる保険」は、将来の受取金を保証していることが多い。加入者からすれば安心かもしれないが、この低金利の状況で数十年後の受取金を決めてしまうことはリスクとなる。何より保険会社にとっては以後数十年の保険料収入が見込めるため、必死に売り込んでくる。月額1万円を超えるような保険商品には要注意だ。

一方、「退職金を投資で殖やしたい」という人もいる。これも投資への考え方として間違っている。たしかに現在は金利が低いので、「銀行に預金しているのは損」という意見に接する機会も多いだろう。だがそうした雰囲気にのまれて無理に投資をすると、必ず失敗する。私は相談を受けると、「投資は必ず損をします。それでもいいですか」と確認するようにしている。

投資で資産を殖やすには、十分な時間が必要だ。金融市場は様々な要因で、大きく上がったり、下がったりする。そのため短期的には「必ず損をする」と考えておいたほうがいい。そのとき「退職金」という大事なお金をリスクにさらすことが適切なのだろうか。働き盛りの人であれば、仮に投資で損をしても就労収入で穴を埋めることができる。しかしリタイアした人は収入で穴を埋めることはできない。退職金以外に十分な貯蓄があるならいいが、そうでないならば無理はしないことだ。

また退職金が投資に向かないのには、「タイミングを選べない」という理由もある。退職金のタイミングと、投資を始めるべきタイミングがうまく合うとは限らない。大金が手元にあると、置いておくのがもったいないと思って焦る人が少なくない。そんなときに金融機関から投資を勧められると浮き足だって、詳細のわからない投資を始めてしまう。これは絶対に避けたい。

もし退職金を殖やしたいのであれば、目的を明確にしよう。「老後のための資金にもっと余裕をつくりたい」というのであれば、どれだけ殖やせば十分なのかという目標を決めたい。目標が決まれば、「何%で殖やすべきか」と「どれだけ損していいか」もわかる。

もう一つ重要なのは、「お任せ」にしないこと。投資の対象はしっかり理解しよう。これは理解できないような複雑な商品を避けることにもつながる。わからないからといって、投資を金融機関の言いなりに進めると、多くの手数料を取られる。窓口で支払うわけではないので実感がわきづらいが、資産運用そのものでは利益が出ていても、手数料を引くと、トータルではマイナスになっているというケースは多い。

老後に備えた資産形成であれば、少額の積み立て投資から始めるのがいい。「日経平均」や「TOPIX」などの指標に連動する投資信託を、天引きで毎月購入するのだ。指標に連動するものは「インデックス投資」と呼ばれ、手数料が安い。積み立てを始めると、相場の動き方も実感できる。