都心でも油断はできない!
都道府県のランキングを見ても、空き家が全国的な問題だということが見て取れる。それは東京都心であっても例外ではない。東京23区の空き家ランキングを見ての、牧野氏のコメントを紹介しよう。
「空き家率の上位が、都心部の区、特に「ターミナル駅」を擁する区だというのが特徴。これは、ワンルームやアパートなどの賃貸住宅の空き住戸の存在を物語っています。池袋、新宿、中野、渋谷、品川などの駅周辺で、平成初期から大量に建設された賃貸用物件が老朽化や新規物件との競合で空き住戸化しています。
むしろ、分譲住宅が多かった周辺区は「今のところ」空き家は少ない。しかし、今後空き家率は、杉並、世田谷、練馬などが上がってくると思われます。持家の空き家がこのエリアで今後増えると予想されるからです。
このエリアに住む分譲住宅の所有者は高齢者が多く、今後相続の発生で、大量の空き家が出てくる可能性が大。都心居住が進む中、会社までの時間距離が重視される住宅選びにおいて、これらの区の交通利便性は良くないところが多いからです(世田谷や杉並などは駅からバスの物件が多い)。
都心居住が進む象徴的なデータが中央区、江東区で空き家率が低いこと。タワーマンションなどの供給が増え、新しいマンションが多く、住民が激増しています。中央区は平成7年頃、かつて16万人あった人口が7万人に減りましたが、現在14万人まで戻っています。総人口に占める生産年齢人口の割合は、中央区は今や日本一の71%になっています」
オラガ総研代表取締役。1983年東京大学経済学部卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)入行。その後ボストンコンサルティンググループを経て、1989年に三井不動産入社。主にオフィスビルの買収、開発、証券化業務などを手がけたのち、ホテルマネジメントやJ-REIT開発なども経験。2009年に独立してオフィス・牧野を設立。2015年にはオラガ総研を設立して現職。著書に「なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか」「空き家問題」「民泊ビジネス」(いずれも祥伝社新書)、「2020年マンション大崩壊」(文春新書)、「老いる東京、甦る地方」(PHPビジネス新書)など多数。
オラガ総研>> http://www.oraga-hsc.com/