もし自分の会社で組織ぐるみの不正が行われていたらどうするか?

燃費データ不正が明らかになった、三菱自動車の軽自動車「eKワゴン」(2013年発売)

人が営む企業だから、ミスや実力不足は起こり得る。自動車という製品であれば、時にそれは人命に関わる。リコール制度はそれを最小限にとどめるためにある。不具合を認めて改修を行うことでユーザーのリスクを減らし、メーカーに対しても製造責任の無謬性を求めないという血が通った制度なのだ。例えば、リコールを行い、定められた手続きを踏んでいるにも関わらず改修に応じないユーザーがいた場合、事故の責任はユーザーにあるのだ。だから、仮に不幸にして人命が失われたとしても、欠陥を認め、きちんと対応したのであればどこまでも責任を求めるべきだとは思わない。しかし、この一連の問題では、人命より重い何かを守ろうとした構図が明らかにある。それが下らない自尊心であったとしたら許すべき範囲を逸脱している。三菱自動車の闇はあまりにも深すぎる。

ひとりの人間として、こうしたことが自分の会社で起きた時に、何ができるのかを考えておかねばならない。ひとつは内部告発である。実際三菱のリコール隠しも、匿名の内部通報者から多岐にわたる詳細な情報が運輸省にもたらされていた。永の年月勤め上げて来た会社がこれ以上劣化していくことを防ぐには、理想的な回答だろう。本当に愛社精神があるなら、その更正に尽力すべきだ。徹底的な自己否定を内部から行うべきなのである。しかし、それは誰にもできることではない。強靱な精神の持ち主にのみ可能な選択肢だろう。

もしあなたが、そうした絶望的な会社の状況を知ってしまったとしたら、そして内部告発者として戦うことが難しいなら、現実的な答えは退職願を書くことだ。企業にいると、自分と企業を同一視しがちだが、間違ってはいけない。それは決して同一ではない。あなたの人生はあなたのものだ。心安らかに棺桶のふたを閉じられるチャンスを失ってはいけないと筆者は強く思う。一番大切なのは、恥じない人生を生きることではないか。

(宇佐見利明=撮影)
関連記事
大企業で続発、データ偽装問題はなぜ起こるか?
リコール続出! ホンダは「タカタ問題」を乗り切れるか?
独VW排ガス不正は世界の自動車産業を地獄に叩き落とすか
山一證券、ソニー、東芝「沈没する会社の共通点」
仕事が嫌になったとき、どう乗り越えるか