おひとりさまでも安心の看取り

こうして看取りの体験をすると、人は、死を身近に感じるようになります。現代社会では、死は「怖いもの、触れてはいけないもの」という観念がありますよね。それは、昔、疫病が流行った時代の影響ではないかと思います。しかし、死は汚らわしいものでも忌まわしいものでも恐れるものでもありません。人が死ぬということは、その人の命を次へとリレーすることなのです。これまで数え切れないほどの人を看取ってきましたが、何度経験しても、死の瞬間の神聖さはとうてい表現しきれるものではありません。

看取りは誰にでもできることです。ご家族に看取っていただけるのであれば、私たち他人が介入する必要はありません。やはりご家族で体を抱きしめる看取りをしていただくのが最良ですから。

しかし、これからの時代、単身者や高齢者の独居がますます増えると予想されています。日本は今後、世界でも類をみない超高齢化社会を迎えます。2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり、“死に場所難民”は47万人になると予測されています。孤独死に不安を感じる方は、ぜひ、看取り士を頼っていただければと思っています。“おひとりさま”向けのサービスも準備しています。

全国に100人以上いる看取り士は医師、看護師、介護士の方々と相談して、24時間体制で患者さまに寄り添うプラグラムを用意していますから、ご自宅だけでなく、病院でも対応可能です。24時間体制になると保険の適応がきかなくなりますが、そのときは、全国に141支部ですべてボランティアから成る「エンゼルチーム」というグループが協力してくれます。

看取り士養成にも力を入れています。看護師、薬剤師や介護士などの医療関係者を中心に、全国で育っています。ご家庭の看取りをしたいが、やり方がわからないという場合には、病状変化や死生観などについて、お伝えします。

私たちは皆、幸せに死んでゆくことができます。そして、生きている間に私たちより先に旅立つ人を“看取る”ことにより、死のあり方、生のあり方を学び、その人の命を引き継ぐことができるのです。

旅立つ方の最期はどうぞたくさん触れて、抱きかかえて差し上げてください。

看取り士 柴田久美子(しばた・くみこ)
島根県出雲市生まれ。日本マクドナルド勤務を経て、1993年、特養老人ホームでの勤務、2002年、看取りの家「なごみの里」を設立。「幸(高)齢者様1人に対して介護者3人の体制で寄り添う介護」と、自然死で抱きしめて看取る実践を重ねる。2014年岡山市に拠点を移す。講演活動や看取り士の育成など、日本各地で精力的に行っている。
(取材・構成=田中響子)
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