直進性の良さと振動吸収性の高さ

日本での新型パサートのラインナップはガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、外部電源からの充電が可能なプラグインハイブリッドの3本立てになるという。そのうち第一弾のガソリンエンジンモデルを、2時間あまりという短時間ながらテストドライブした。試乗車はレザーインテリアを持つ上級グレードの「ハイライン」。

まずは佇まいとインテリア。パサートは歴代、地味なデザインを貫いてきたが、新型パサートはくっきりと折り目の入ったボディパネルやLEDライト、またメーターパネルや明るい色調のインテリアなど、情感に訴える演出を盛り込んだとは、関係者の弁。実物を見ると、確かにいろいろな部分が凝ったデザインだと感じられる一方、それはあくまでノンプレミアムDセグメントの範囲内の話で、アウディやBMW、メルセデス・ベンツなどプレミアムDのモデルには遠く及ばないものでしかない。

質の高さを感じるのはデザインよりむしろ、ドアハンドルを引いたとき、シフトレバーやウインカーレバーなどを操作したときの精度感あふれるタッチ。国産車、輸入車のプレミアムDでももっと雑なクルマはいくらでもある。このあたりの作り込みは、欧州Dセグメント首位モデルらしさを感じさせる部分だった。

エンジンをかけて走り出してみる。そこで印象的なのは、パワートレインからのノイズレベルが驚異的に低いことと、ナチュラルなパワーフィールだった。新型パサートのパワートレインは、1.4リットル直噴ターボエンジンと伝達効率の高い7速デュアルクラッチ変速機の組み合わせだが、エンジンは極低速からターボ過給が素早く立ち上がり。その後のパワーコントロールでも自然吸気エンジンと区別がつかないほどだ。また出始めの頃は、時として変速プログラムが迷いを見せることもあったデュアルクラッチ変速機も熟成が進んだとみえて、普通のオートマチックとドライブフィールの違いはもはや感じられなかった。

走行性能のチューニングで美点と思われたのは、直進性の良さと、不整な路面における振動吸収性能の高さ。とりわけ高速走行時の直進性は、遠くの目標にステアリングの修正なしに吸い寄せられるような良さで、プレミアムDと比べても遜色ないものだった。乗り心地も内外のライバルと比較してもトップレベルにあるが、この点については、日本メーカーのベテランテストドライバーをして「どうあっても追いつけない」と言うほどだった旧々型および旧型モデルのような圧倒的なフィーリングの良さと比較すると、やや退歩した感もあった。