説明はシンプルにわかりやすく1~2行

会議は情報の共有化や意思決定のために必要であるが、話の内容が単なる説明に終始し、ほとんどの参加者はただ座っているだけで時間が過ぎていくのでは意味がない。基本的に会議の時間は短くしなければならない。

やたら会議資料をつくる人を見かけるがこれもムダである。芸術作品を創造するのではないのだから、会議資料で完璧を目指す必要はない。それよりも必要なことをわかりやすく伝えるほうが重要だ。

「説明はシンプルにわかりやすく、1行か2行でまとめよ」と私は言っている。

会議ではみんなが意見を出せるような形で運営することが大事だ。一人の独演会になってはいけない。

以前、生産現場の長で問題意識や言いたいことはたくさんあるが、それをなかなか語らない人がいた。しかしそういう人に工程会議に出てもらい、自分の言葉で語ってもらって問題意識を共有し「どのような状態になればこの問題はクリアされるのか」「それを解決するには誰が何をすればよいのか」ということを決めていくと仕事はどんどん進んでいった。

逆に上から部長、係長、班長と、「こういう問題があるからこのやり方で解決せよ」と通達を下ろしたところで誰も問題に取り組もうとはしない。自分たちで決め、自分たちでやることが重要なのだ。

その意味ではサッカーのプレーヤーと同じ。フィールドに入り、笛が鳴ったら個々のプレーヤーがその瞬間、瞬間で自分はどう動けばよいかを判断していくよりほかない。なでしこジャパンも、「佐々木監督、どう動けばいいですか?」といちいちベンチを見ていたら、その隙に相手はゴールを決めてしまうだろう。

これからの会社組織はサッカー型のスタイルにならないともう持たない。生産、物流、営業、本社と部門は異なってもキリンらしさや会社の目標を共有したうえで、個々の社員が「この局面で私は何をすればよいのか」を考えベストの行動をしていくようにしなければならない。

当社でいえば事故を起こさずいい商品を供給する役割の生産部門はディフェンダー、営業部門は点を取るフォワード、物流や本社はその間のミッドフィルダーにたとえられる。役割は違えども皆同じチームの一員である。

かつて私の出身である生産部門では「商品戦略が悪い」「営業が悪い」という話が平気でなされていたが、それは間違っている。別にディフェンダーが機を見てオーバーラップし、シュートをうってもよいのだ。現代サッカーにおいてポジションが流動的であるように、一人ひとりが自律的に動きながら全体最適を実現するのが強いチームである。

※すべて雑誌掲載当時

(宮内 健=構成 相澤 正=撮影)