ワンマン社長の長期君臨も悪くはない

2014年5月8日、宮内義彦氏は記者会見を開き、6月の株主総会後に退任すると正式に発表した。後継者には井上亮社長(写真左)が就任。在任以来、営業収益は約20倍に拡大した。

何にせよ、これからは本当に役立つことの中から一番おもしろそうなことを選んでやっていきます。会社の課題の1、2、3番目は、新しくCEOになる井上亮社長に任せておけばいい。井上社長は優秀だから、1、2、3といわず、5、6とやってくれるはずです。

とくに期待しているのは行動力です。私のように30年も経営者をやっていたら、否でも応でも判断力がつきます。でも、逆に年齢とともに行動力は落ちてしまう。トップが走り回ると下も走りますから、井上社長にはぜひ先頭を切って走り回ってもらいたいですね。

当社はようやくバトンタッチできましたが、まわりを見回すと、まだトップで頑張っていらっしゃる同世代の方も多いようです。

日本企業はワンマン社長が長く君臨するという批判もありますが、必ずしもそれが悪いことだと思っていません。たしかにアメリカではトップのリタイアが早い。ただ、それは社会が早熟だからです。アメリカ社会で20歳は立派な大人。一方、日本で20歳といったらまだ幼いでしょう。その差はずっと続いて、60歳ならアメリカではそれなりの年ですが、逆に日本では「これからや」となる。日本企業のトップの年齢が高いのも当たり前です。

ワンマンも別にいいんじゃないですか。私も「オリックスは自分の会社だ」と思ってやってきました。これは会社を私物化するという意味ではありません。私は会社の株もほとんど持っていないし、息子にも「オリックスだけには入れないぞ」と言ってきた。それでも自分の会社だと思うからこそ、会社のために体を張れるのです。

ただ、そうなると後任が育ちづらくなることはたしかです。とくに私は、「いい大人を育てるなんておこがましい。早く自分で追いついてこい」と考えてきたので、結局、バトンタッチに時間がかかってしまいました。