お返し(購入)しなければ居心地悪いと思わせる
こんなに安値でただ商品を売ったのでは、業者は儲かるはずがない。業者の目的は、まず参加者らを繰り返し販売会に呼び寄せて、そのなかから、金のある人に目をつけて個別に呼び出し、数十万円の高額な健康食品や掃除機、布団などを売りつけることにある。
この催眠商法では無料で商品を配り、格安商品(無料商品)を提供することで、相手に負い目をつくる。
私たちの心には、他人から一方的にモノをもらうと、自然とお返したいという気持ちが働く。これを「返報性の法則」という。業者はこの「お返しをしなければ」という思いを、過剰なサービスをすることで強く意識させる。そして、このサービスにより、消費者は業者の勧誘を断りづらい環境に追い込まれることになる。
催眠商法の業者に騙されないためには、業者からは、何ももらわない心がけを持つことが必要である。その時、モノだけでなく、業者からは親切心も容易に受け取らないようにする。
秋田県では、高齢者らを販売の目的を告げずに会場に誘い込んで、高額な健康器具を売りつけたとして特定商取引法違反の容疑で、男らが逮捕されているが、こうした商法の場合、販売目的を告げずに会場に連れ込むので法律違反になる。
しかし、事前に売る商品を伝えた上でサービスする行為は決して悪くない。このワル業者から学べることは、「徹底的に相手に尽くす行為」だろう。
無料のパンを配る時は、汗だくで動き回り、踊りで笑いを提供するなど、我を忘れて他人に尽くすという行為は、相手によい印象を与えられる。
一般の商品販売やサービスを提供するお店でも、多くの人を呼び込むために、「無料プレゼント」などの手法を使うこともあるだろう。デパ地下のデパートやスーパーの試食品も同じ狙いである。
「まずはお試し下さい。無料サンプル差し上げます」
「30日間の試用後に、使い心地に不満なら返品可能」
「お得意様限定利益還元セール」
「保険セールスレディによるプレゼント攻勢」
など営業方法も、この「返報性の法則」をベースにしたものである。
ただ、よくある失敗が、中途半端なサービスを提供してしまったため、業者側の見返りを期待しているという思惑が透けてみえてしまうことである。
私も無料プレゼント商品と言われて、手にしたものが、しょぼいものだったことがあるが、こうなると、間違いなく消費者の購入マインドは冷え込むことになる。
それに対して、催眠商法では、来場した客に汗を流して、無料商品を配り、自分が道化となり、「笑い」を提供し、格安で商品を販売する。もしそのサービス提供を受けただけで、帰る客がいても良しとする、見返りを期待しない姿勢を終始見せている。
中途半端なサービスは、中途半端な結果しか生まない。損して得取れといわれるが、徹底したお客様へのサービスこそが、大きな利益を生みだすのである。