「ウソ化」する世界に追いつかないルール

それとよく似た現象が現実世界に起きた実例が、「ヴァーチャル・ワールド」というわけだ。しかも現実世界には、ウソとホントの両立ができるあらたなルールやマナーが整えられていない。

詐欺も欺瞞ぎまんもやり放題の世界でコントロールする「道」が見つからない。その結果、人々の思考やコミュニケーションの道具となる言語や記号の混乱が起きる。

世界が「ウソ化」したのに、現実世界では数学における虚数みたいな「ウソOK」という新ルールができていない。

これが問題の本質なんだと思う。

FakeとFact、語尾の2字で真逆になる
写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです

いまこそ「英知」「叡智」が必要だ

とするならば、数学のように大胆で革新的な情報や知識の管理ルールの変更が、現代社会でも必要になるにちがいない。

では、そういうものはできるのか。AIの登場で情報社会の進展がおそろしいほどスピードアップした今、もう老齢に達した元情報エンジニアのわたしに妙案はない。だが、こういう時代に自分の身を守り、しかも少しは意味のある新思考の実験くらいはできるかもしれない。

人間は、社会で暮らす共同生活の動物として存在する。その基本は、得た知識や見つかった問題解決法を共有し、共存をはかることだった。これがコンプライアンスの基本であって、この本丸が情報の暴走や知識の悪用で破壊されることは、本末転倒といえる。

たぶん必要なのは、無尽蔵に増殖する情報や知識の重圧と束縛を跳ねのける「賢人の視線」なのだろう。それを古めかしいことばで「英知」と呼んだ。「叡智」というさらに古めかしい表記もある。