市場をけん引する「サトウのごはん」

市場をけん引してきたのは、やはり先駆者・サトウ食品の「サトウのごはん」だ。価格帯は高めだが、炊きたてに近い味わいと品質を追求し続け、ブランド力と安定供給力で多くのリピーターを抱える。2020年代以降は新潟県三条市に新工場を増設し、生産体制を強化する一方で、採算の合わない一部商品の終売に踏み切るなど選択と集中も進める。

白鳥和生『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)
白鳥和生『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)

パックご飯は利便性だけでなく、製造から販売までのプロセスを内製化しやすい食品でもあり、高収益性を狙えるカテゴリーだ。炊飯工程を持たず流通に乗せやすい構造は、卸や物流企業にとっても扱いやすく、今後の成長戦略の軸として期待が高まっている。

競合他社も差別化に力を入れる。テーブルマークは「蒸らし工程」を加えた二段階加熱方式で食感を向上。東洋水産は「かため」「やわらかめ」など食感バリエーションを打ち出し、パーソナライズされた選択を提供。アイリスフーズ(アイリスオーヤマ)は、精米から包装・物流まで一貫体制をグループ内で構築し、コスト競争力を高める。ウーケのように「北アルプスの天然水」を訴求する自然志向商品も台頭し、製品の個性化とチャネル多様化が同時に進む。

グローバル現地調達・生産の商品も

輸出の伸びも注目される。2023年にはパックご飯の輸出額が約10億円に達し、アメリカ、香港、台湾、韓国などでの需要が拡大。特にアメリカでは、日本米人気を背景に現地スーパーやアジア系食品店で棚を確保。サトウ食品やアイリスフーズ、テーブルマークなどは輸出専用製品の開発や現地仕様への対応を進めている。植物検疫などの規制が緩やかなことも追い風となっている。

日本国内の原料米の不作と高止まりが続けば、国産米のまま輸出拡大を図る路線に加えて、現地での調達・生産によるグローバル展開も選択肢に浮上するだろう。いずれにせよ、パックご飯は“非常食”から“選ばれる主食”へと、そのポジションを大きく変えようとしている。

「パックご飯」は日本の食文化を変えるか

物流の「2024年問題」や人手不足が深刻化する中、常温での長期保存が可能なパックご飯は、本来であればサプライチェーン効率化の観点からも注目されるべき商品だ。だが、その強みを活かすには、安定した需給と価格信頼性の確保が前提条件である。持続可能な調達・製造・供給のしくみをいかに構築していくかが問われている。

令和のコメ騒動は、単なる供給危機ではなかった。私たちが「主食」として向き合う米の存在や、そのあり方を根本から見直すきっかけとなった。日本の「炊飯文化」に新しい選択肢が加わった今、私たちは“主食のあり方”を改めて問い直すタイミングに来ているのかもしれない。