炊飯器を持たないタイパ世代

コメ価格高騰以前から、パックご飯は着実に需要を伸ばしていた。背景には、単身世帯や共働き家庭、高齢者を中心とした食生活の変化、家事の時短志向、さらにはZ世代に見られる“タイパ(タイムパフォーマンス)”志向の定着がある。「ご飯は炊くものではなく、買って温めるもの」というライフスタイルが広がりつつある。

実際、炊飯器を所有しない世帯も目立つようになってきた。とくに都市部の単身者、学生、共働き世帯などを中心に「炊かずに済む」メリットが浸透。炊飯器の所有率は年々低下傾向にあり、こうした“炊かない派”のライフスタイルがパックご飯の後押しとなっている。

炊いたほうが3倍は安いものの

標準的な180〜200グラムのパックご飯1食あたりの価格は、近年では税抜きでおよそ150〜180円が主流であり、家庭で米を炊く場合の1食あたりコスト(約50〜60円)と比較すると、約3倍の価格差がある。そのため、もともと「炊いたほうが安い」という認識は広く共有されていたが、利便性を重視する層の支持によって市場は成長してきた。

スーパーの棚に並んだパックご飯
筆者撮影
コスパ的には悪いが利便性を考えるとトクとも言える。

防災の観点からも注目度は高い。非常食を使いながら災害に備えるローリングストックの普及により、家庭で常備するパックご飯の需要が底堅く拡大。パックご飯は「新しい主食」としてのポジションを確立しつつある。