1980年には1億匹以上のハエを飼うためのハエ工場を那覇市と奄美大島の名瀬市に建設した。そして毎週、1億匹以上の不妊化したハエをヘリコプターと人力で撒き続けた(*16)

そして、1978年から1993年にかけて尖閣諸島を除く南西諸島のすべての島からウリミバエを駆逐し根絶した。この一大プロジェクトは、2001年(平成13年)11月13日にプロジェクトX(NHK番組)でも「挑戦者たち~8ミリの悪魔VS特命班~最強の害虫・野菜が危ない」と題して特集された(*17)ため、年配者の多くの方々はご存じだろう。

20年以上の歳月と多くの人たちの努力の末に、特殊害虫のウリミバエは完全に駆逐され、沖縄産のニガウリやマンゴーは本州でも食べられるようになったのである。いまでは当時のことを知る人も少なくなっているが、その歴史については、拙著『特殊害虫から日本を救え(*18)に詳しい。

うまくいけば数年以内に完全駆除

今回、沖縄県は、この不妊化法をセグロウリミバエに対して使うことにした。

幸い、ウリミバエの再侵入対策のため、いまも稼働している那覇市にある3階建てのハエ工場で、沖縄県は、セグロウリミバエを増殖し、不妊化法を実施することを決めた。そして4月28日には照射して不妊にした1万匹のセグロウリミバエ成虫を試験的にヘリコプターで撒き、6月には2400万の放飼を目指すという(*19)

セグロウリミバエの成虫。不妊化法が功を奏しても、完全駆除には数年はかかる。
写真提供=筆者
セグロウリミバエの成虫。不妊化法が功を奏しても、完全駆除には数年はかかる。

ウリミバエと近い仲間(同属種)で、ウリミバエと似た生態を持つと考えられるセグロウリミバエに対して、不妊化法が効力を発揮する確率は高いだろう。そして、なによりも沖縄県には不妊化法に長けたエキスパートの職員たちがまだ残っている。

不妊化法が敵に対して有効な武器であれば、数年以内に駆除が可能となり、定着を阻止することができるだろう。

害虫の生態を知る基礎研究が必要だ

それでも、なお心配な事がある。

ウリミバエとは別種であるセグロウリミバエについては、世界で根絶に成功した事例はなく、その生態もよくわかっていない。駆逐する害虫である敵の生態(生き様)を詳しく知らなくては、敵をたたくことはできない。駆逐作業は急務だが、敵の行動と生態を知るための基礎的な研究が必要である。

ここに税金を投資するのは日本にとって利があるだろう。

そもそも、沖縄本島の名護市になぜいまセグロウリミバエが突如、出現したのか。その理由すらよくわかっていない。ミバエ類は東南アジアや中国南部から吹く風に乗って日本にやってくることもある(*18)

だが風に乗ってミバエ類がやってくるときは、南西諸島から九州にかけて線状帯を描くような形で、北向きに連なる複数の地域に仕掛けた罠にトラップされるのが普通である。

一方、今回出現したセグロウリミバエは、最初に現れた名護市から、徐々に周囲に広がる傾向が見て取れた(*7)

ミバエ類の防除と研究に携わってきた私は、今回の出現は、海外で寄生されたウリ類などの果実を誰かが持ち込んだ可能性もあるのでは、と察している。

肝心なことは、これからも、寄生された果実を誰かが日本に持ち込むリスクを軽減することだ。