「マルチパスウェイ」はトヨタの専売特許ではなかった……
現在の市場トレンドを見ると、BEVの市場はこれからも徐々には伸びていくだろうが、しばらくの間はICEを搭載したPHEVとハイブリッドが主流の時代が続くと考えられるので、高性能で低価格な高効率エンジンとハイブリッド技術には大きなポテンシャルがある。
今後中国から輸出される車は、BEVよりもPHEVやハイブリッドが主力となると考えた方がよいだろう。BYDは2025年末までに日本市場にPHEVを導入すると発表しており、今後は日本市場でもBYDの主力はPHEVとなるはずだ。
中国車はBEVのみならずトヨタが主張する「マルチパスウェイ」においてもものすごいスピードでレベルアップしているのだ。「マルチパスウェイ」にいち早く取り組んでいる日系メーカーはまだハイブリッド技術や最新エンジン技術でアドバンテージはあるものの、近い将来中国車との激しい競争にさらされることになるだろう。
BEVでもハイブリッドでも苦戦している欧米メーカーは厳しい状況に追い込まれる恐れがあり、今以上に保護貿易に頼らざるを得ないかもしれない。
危機感を募らせる日本勢の動向
さらに、今後重要度が増すといわれているSDV分野でも中国は国内の競争が激しく、それゆえ日米欧より先行しており中国メーカーの競争力は高くなっている。
トヨタは5月に発表された新型RAV4からまったく新しいトヨタ独自のソフトウエア開発プラットフォームArene(アリーン)を使って開発をしているが、4月の上海モーターショーで発表された新型BEVのbZ7にはファーウェイのハーモニーOSを採用したり、ADAS(運転支援システム)でも中国企業のモメンタと協業したりしている。
ホンダも今後のBEV開発で中国の技術を導入する(モメンタのADAS、DeepSeekのAI技術など)としている。この分野の競争・協業は日米中の企業間でかなり複雑な形で推移していくと思われる。
自動車以外に目を転じると、世界のスマートフォン市場の56%は中国ブランドで、日本ブランドの存在感はほぼない。
一時は世界的に日本ブランドの独壇場だったテレビ市場も、日本国内ですら現在中国メーカーのシェアは50%を超えているのである。
ソニーやパナソニックのテレビも生産国はマレーシアや中国だ。近い将来、自動車市場もスマートフォンやテレビと同じ状況となっても不思議ではないのである。日本の自動車メーカー各社のよりいっそうの奮起を期待したい。

