最後に向かうは秋田の郷土料理。秋田から比内地鶏や野菜、茸類を取り寄せる麻布の「鹿角」で、感動的なきりたんぽ鍋に巡り合った。

地鶏のガラでとったスープに割り下を加えた汁で、地鶏の胸肉、もも肉、それから心臓、レバー、腸などの内臓、さらにはキンカン(生まれる前の卵)を煮る。よく香る芹と黒舞茸も入る。酒は銘酒を合わせたい。さて新政(あらまさ)にするか、高清水(たかしみず)か。

あきたこまちを炊いて潰してこねてから棒に巻きつけるという作業のすべてをこの店で行う手づくりのきりたんぽ。これが格別だ。大根を麹で漬けた「なた割漬」ともども、ため息が出るほどうまい。

汗ばみながら夢中で食えば、またまたここが西麻布ではなく、秋田に思えてくる。

 

【秋田】鹿角(かづの)●荒木町

比内地鶏も、根っこまで旨い芹もすべて直送! 店で搗いたきりたんぽは、本物の米の味がする

昭和の名女優、故・沢村貞子さんのマネジャーだった山崎洋子さんが、故郷の鹿角の料理を供する店として1993年に開店。

東京都港区西麻布1-15-16 SDビル1F TEL.03-3402-8212
営業時間/17:00~22:30(LO) 日祝休
カード可 全24席 喫煙可

[秋田出身]ファミリーマート社長 上田準二「郷土料理の思い出」

秋田は米をはじめ、山海の幸に恵まれた食材の宝庫。地域で気候も生活も違うため、その数だけ様々な郷土料理がある。同じ鍋でも県北では「きりたんぽ」、私が育った県南では「かやき」が馴染み深かった。もとは貝殻を鍋の代わりに使った漁師料理である。季節の食材を入れて食べたことが今でも思い出される。