「そのフィールドごとのトップブランドになってほしいからです。ただし、絶対売り上げと絶対利益を大きくしろという意味ではない。1店当たりの来客数と利益率が、相対的に最も高いという意味でのブランドを目指すのです」
つまり、吉野家同様、徹底的に商品を磨き上げ、本業だけで稼ぐ尖った企業群を育て上げたいというのが、M&Aを行う真意なのだ。最後に、安部社長にとって数字とは何かを尋ねてみた。
「最も重要なコミュニケーションの道具ですね。言葉だけを伝えると、まったく逆の解釈をされるといったことがしょっちゅう起こってしまう。ですから、個々の役割を明確にするためには、数字で目標を伝えることが不可欠です。ところが、数字だけ伝えると、今度は手段の目的化という現象が起こってくる。数字はあくまで手段であって目的ではない。だから、数字は必ず目的と一緒に伝えなくてはなりません。数字を使うときには、きちっと翻訳してやることが大切なのです」
【吉野家 DATA FILE(5)】
売り上げの約40%は牛丼以外の商品で占める
グループ全体の売り上げの半分近くを牛丼以外で占めることは、意外と知られていない。07年、1杯180円の「びっくりラーメン」チェーンを運営する「ラーメン一番本部」の救済に乗り出すことを発表。ラーメン店を傘下に置くのは初めて。
(鷹野 晃=撮影 ライヴ・アート=図版作成)