彼らクリエイティブクラスが自由を求めて出ていけば、空席が生まれる。そうなれば少しずつであれ、仕事の経験のない若者が入場できるようになるだろう。

このようにして閉鎖的な労働市場は、より公平で流動性の高いものになっていくはずだ。

自らの利益のためにすすんで会社をあとにするひとびと

ではなぜ、会社内のクリエイティブクラスはフリーエージェント化するのだろうか。

これは別に、彼らが日本国の将来のために身を犠牲にするからではない。そのほうが「得」だからだ。彼らは自らの利益のために、すすんで会社をあとにするのだ。

ロバート・キヨサキのベストセラー『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』では、貧乏父さんは公務員、金持ち父さんはフリーエージェント(マイクロ法人)だった。

アメリカの富裕層を研究したトマス・スタンリーとウィリアム・ダンコは、『となりの億万長者 成功を生む7つの法則』で、組織に雇われていないひとが億万長者になる割合はサラリーマンの4倍と推計した。

フリーエージェントになることは、金持ちへの第一歩でもある。

クリエイティブクラスを解放せよ

“被差別”の境遇に置かれているロスジェネ世代のために無駄な公共事業を削減し、社会的セーフティネットを整備し、教育や訓練が受けられるようにすることは大事だろう。だがそれと同時に、クリエイティブクラスの独立を促すような制度をつくることも必要だ。

橘玲『新・貧乏はお金持ち』(プレジデント社)
橘玲『新・貧乏はお金持ち』(プレジデント社)

もちろん、多少経済的に有利なだけで、サラリーマンが続々と独立するなどということはありえない。組織に属していることのメリットは、金銭的なものだけではないからだ。

だがその一方で、かつてのオーガニゼーション・マンが日本のサラリーマンに駆逐されたように、いまや日本のサラリーマンは中国やインドの若い労働力によってエデンの園を追われつつある。日本の現状がアメリカの30年前と同じなら、労働市場の流動化によって、今後十数年で1000万人のフリーエージェントが誕生したとしても不思議はない。

2016年に安倍晋三政権が「働き方改革」を掲げたことで、永久凍土のようだった日本的雇用もようやく変わりはじめた。フリーエージェント化の奔流はまだはじまっていないが、「新卒で就職した会社で定年まで勤めあげる」という価値観は完全に崩壊し、過去のものになった。

次は、クリエイティブクラスが会社から解放される番だ。