フリーエージェント化を後押しする環境変化

経済環境の大きな変化も、フリーエージェント化を後押しした。

知識社会化と急速な技術革新によって、誰でも安価に生産手段を手に入れ、起業できるようになった。資力のない個人が自動車工場や製鉄所を建設するのは困難だが、いまではスマホとパソコンさえあればはじめられる仕事がいくらでもある。

フリーエージェントを支える社会インフラも整ってきた。

スターバックスで打ち合わせをし、キンコーズでプレゼンテーション資料を印刷し、貸し事務所(ビジネスセンターやエグゼクティブ・オフィスクラブと呼ばれる)で秘書と会議室を確保し、必要な資料は私書箱で受け取って宅配便で発送すれば、個人でも大企業と対等にビジネスを行なえる。

ラップトップでデスクで仕事する女性
写真=iStock.com/lechatnoir
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個人企業でも大企業並みのビジネスインフラが構築できる

そしていま、クラウドコンピューティングがビジネスを大きく変えようとしている。

クラウドコンピューティングは、ネットワークの雲の中にひとつの巨大な仮想コンピュータが存在するようなものだ。メールから顧客管理まで、あらゆるデータ処理がこの仮想コンピュータで行なわれることで、大規模な組織はもちろん、オフィスすら不要になる。

その最大の特徴は、個人でも大企業と同じ最先端の情報処理技術を安価に活用できるようになることだ。

個人企業でも大企業並みのビジネスインフラを構築できるようになれば、もはや一カ所に多数の労働者を集める必要はなくなる。こうした傾向は、とりわけクリエイティブクラスが従事する知識産業で顕著だ。

このようにして巨大組織は衰退し、ひとびとはフリーエージェント化し、世界中に無数のマイクロ法人が誕生することになるだろう。

「自由」になるべきクリエイティブクラス

いうまでもなく、フリーエージェントはクリエイティブクラスと同義ではない。

とりわけ日本においては、フリーエージェントの大半は契約社員で、「自由」とはほど遠い状況に置かれている。このままでは、フリーエージェント化は“スレイブ化”の別名になってしまう。

日本では、「自由」になるべきクリエイティブクラスの大半はいまだに会社に囲われている。だが、保守的で官僚的な会社システムの中で、彼らがその能力を十分に発揮しているとはいいがたい。