頭のいい子を育てるには、どうしたらいいのか。東大生作家の西岡壱誠さんは「多くの東大生に共通する幼少期からの習慣がある。例えばスーパーでの親子の会話も、思考力を鍛える練習になっていた」という。西岡さんと東大カルペ・ディエムの共著『東大生が読み解く ニュースが1冊でわかる本 2025年版』(TAC出版)から紹介する――。(第2回)

大学受験で「考える力」が求められている

昨今、選抜入試による大学進学が急速にメジャーになってきています。東京大学も学校推薦型選抜を導入しています。東北大学に至っては、2050年までに入試を「総合型選抜」に全面移行するとの方針を決めたと、TBSなどが報じています。

総合型選抜では、大抵の場合は志望理由書の提出が求められます。そして、多くの場合、志望理由書では社会課題についてどう考えているかという見解を述べることが問われます。「どう考えるか」への答えは、単にニュースを表層的に知るだけでは書くことが難しいものです。単に時事ネタを暗記するのではなく、「これってどういうことだろう?」「なんでこういうことが起きたんだろう?」と出来事の背景にも思考を巡らせ、問いを深掘りする必要があります。

周りの東大生に話を聞いてみると、日頃からあらゆることに疑問を持ち、「これってなんでだろう?」と思考を巡らせている人が多いです。その過程で思考力が鍛えられ、同時にさまざまな知識を蓄えている傾向が強いのです。この「考える力」を身につけるきっかけは何だったのか? 聞いてみると、幼少期の家庭での過ごし方について、ある共通点が浮かび上がりました。

それは、「日常生活の中で、家族と一緒に『考える機会』がたくさんあった」というのです。何も、特別な教育や難しい教材が与えられていたというわけではありません。普段の何気ない家族の時間こそが、親子の「思考力トレーニングの場」になっていたのです。

まだ何も入れていない、スーパーのかご
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「値段が高いね」で話を終わらせない

一例として、ある東大生の話をご紹介しましょう。彼は小学生の頃、家族でよくキャンプに行っていたそうです。ある日、キャンプ場がある山梨県のガソリンスタンドで給油をすると、彼が住んでいた神奈川県のガソリンスタンドと比べ、値段が明らかに高いことに気がついたそうです。

車の中で、彼が「なんか、ガソリン高くない?」と何気なくつぶやいたら、運転席に戻ってきた父親が、「なんで高いんだろうね?」と返してきたといいます。

息子「最近、円安になってきたから?」

「円安だと、日本全体で値段に影響しそうだよね。山梨と神奈川と差が出るかな?」

息子「じゃあ、山梨の方が、ガソリンの仕入れが大変だから?」

「確かに、仕入れにコストがかかると商品の値段も上がるよね。ガソリンってどうやって仕入れるんだろうね?」

息子「日本では石油が採れないから、外国から輸入してる?」

「そうそう。石油タンカーっていう船で運ばれて来るんだよね」

そうやって家族で話し合っているうちに、考えが掘り下げられていきました。最終的には、「ガソリンの原料となる石油は、タンカーで海沿いの地域に届けられて、ガソリンに精製される。山梨県では、それをパイプラインで内陸まで運ぶ必要があるから、輸送コストが上乗せされて値段が高くなっている」という結論まで辿り着いたそうです。