150年、200年前から歴史の荒波を乗り越え、日本経済を牽引してきた旧財閥グループ。経営史学者の菊地浩之さんは「三菱、三井は明治期に学生の新卒採用を始め、財閥内に学閥が生まれた。戦前の三菱は東大出身者が最も多かったが、戦後に財閥解体してからは慶応出身者の役員が8.5%も増えた」という――。
※本稿は菊地浩之『財閥と学閥 三菱・三井・住友・安田、エリートの系図』(角川新書)の一部を再編集したものです。
1999年時点での三菱グループにおける最大学閥は?
三菱の現在の状況について見てみよう。ただし、分析年次は1999年とする。2000年以降は三井と住友が合併したり、安田が「みずほ」に吞み込まれたりして、三井財閥や安田財閥の現在といえなくなってしまうからだ。
三菱グループ企業というと、一般的には社長会「三菱金曜会」加盟メンバーを指すが、分系会社(三菱財閥の直系企業)以外のキリンビール、東京海上火災保険、明治生命保険、戦後設立の三菱自動車工業、三菱建設を含んでいるので、対象を分系会社の後継会社に絞った。ただし、三菱石油は1999年当時、日本石油に吸収合併されてしまい(日石三菱)、三菱グループ会社とはいえないと思われたため除外した。また、三菱マテリアル(旧三菱鉱業)は役員の学歴を開示していないので、これも対象から除外した。